解説!ストレスチェック制度の基本と産業医の関わり 2021/09/20 2024/03/11 ストレスチェック 初めてのストレスチェック実施に必要な情報をそろえました 初めてストレスチェックを実施する会社にとっては、ストレスチェック制度の目的や、会社として何をしなければならないのか、わからない点が多いことでしょう。この記事では初めてストレスチェックを実施する事業所の皆様に向けてストレスチェックの概要や実施の流れ、産業医の役割などを一つずつ解説していきます。 この記事でわかること(目次)初めてのストレスチェック実施に必要な情報をそろえましたストレスチェック制度とはストレスチェックの目的ストレスチェックの実施要件ストレスチェックの実施体制ストレスチェックの実施方法ストレスチェックにおける産業医の関わり実施者としての役割ストレスチェック実施上の注意点不利益な取り扱いの防止プライバシーの保護まとめストレスチェックに関する課題はエリクシアで解決!すべて表示 ストレスチェック制度とは そもそも、ストレスチェック制度とはなんでしょうか。ストレスチェック制度は労働安全衛生法第66条の10(心理的な負担の程度を把握するための検査等)に定められており、常時50人以上の労働者を使用する事業者は年1回実施することが義務付けられている制度です。 ストレスチェックとは、ストレスに関する質問票に従業員が回答し、それを集団で集計・分析して調べたり、従業員自身が自分のストレスがどのような状態にあるかを知るための検査です。 ストレスチェックの目的 ストレスチェックを実施する目的は、従業員側と事業者側で異なります。 従業員側の目的 従業員側の目的は3つあります。 ①自らのストレス状態を知りメンタル不調の未然防止につなげるストレスの原因やストレスがどの程度溜まっているのかなど、自身のストレスの状態を知ることでメンタル不調の未然防止につなげます。 ②会社側に措置を実施してもらうストレスチェックの結果、高ストレスと評価された場合、医師からの面接指導を受けることで就業上の措置につなげられます。 ③職場改善に役立つストレスチェックの集団分析によって職場環境の改善につなげることができます。 事業者側の目的 事業者側の目的は主に2つです。 ①職場環境の改善に役立てるストレスチェックの集団分析を活用することで、高ストレス者が多い集団の特定や、集団ごとの傾向を把握することで職場環境の改善につなげることができます。 ②労働生産性の向上メンタル不調の未然防止により生産性の向上につながり、経営面でプラスとなります。 ストレスチェックの実施要件 ストレスチェックは「労働安全衛生法」の改正により2015年から要件を満たす事業所に実施が義務付けられました。 ストレスチェック実施対象の事業所 パートやアルバイト、派遣労働者なども含む労働者数50人以上の事業場に実施が義務付けられています。また、労働者数が50人未満の事業場については努力義務となっています。例えば労働者数の総数が500人を超える企業であっても、本社や一部支店は50人を超えていて、地方拠点は50人未満ということもあるでしょう。この場合、事業場の労働者数が50人未満の地方拠点については、ストレスチェック実施は努力義務の範囲となります。 ストレスチェック実施対象の従業員 ストレスチェックの実施対象になる従業員は、一週間分の労働時間数が所定労働時間数の4分の3以上で、労働契約期間に定めがない者や契約期間が1年以上継続する見込みがある者が対象です。つまり、社会保険加入者であればおおむね対象※となります。なお、ストレスチェック実施期間に休職している従業員に関しては実施しなくても構いません。 ※社会保険加入条件の緩和が続いており、必ずしも社会保険加入者と対象者が一致するとは限りません。 ストレスチェックの義務範囲 ◆事業者側事業者側の義務範囲は以下のとおりです。 義務・1年以内に1回実施・高ストレス者への面接指導の実施高ストレス者として面接が必要と判定された従業員から申し出が合った時は産業医による面接指導を行う。・報告書の提出検査、面接指導の実施状況などについて、毎年1回定期的に所轄労働基準監督署へ報告する。(※50人未満の事業所でストレスチェックを実施した場合、報告義務はなし)・結果の保存事業者に公開されたストレスチェックの結果は5年間保存する。 努力義務・集団分析の実施一定規模の集団(部、課など)ごとのストレス状況を分析し、その結果をふまえて職場環境を改善する。(※集団規模が10人未満の場合は、個人が特定されるおそれがあるので、原則10人以上の集団を集計の対象とする。) ◆従業員側従業員は、ストレスチェックを受ける義務はなく、高ストレス者として面接指導が必要と評価されても面接を受ける義務はありません。しかし、メンタル不調になることを未然に防止するためにも検査を受け、高ストレスの場合は面接指導を受けることを強くお勧めします。 ストレスチェックの実施体制 ストレスチェックを実施するにあたって、以下のような人たちが関わっていきます。それぞれの役割と注意点を確認しておくようにしましょう。 1.実施者 ストレスチェック実施者になれるのは医師ならびに保健師、研修を受けた看護師または精神保健福祉士、公認心理師とされています。また、ストレスチェックを行っている外部機関へ委託することも可能です。実施者はストレス程度の評価結果や、高ストレスかどうかの判定、医師の面接指導の必要性について、労働者に通知します。そのため、事業場の状況を日ごろから把握している者(産業医など)が実施者となることが望ましいとされています。ストレスチェックの実施を外部機関に委託する場合には、実施者の依頼ができるのか、自社で手配した方がよいのか等確認するようにしましょう。 2.事務従事者 実施事務従事者とは、実施者の補助をする者のことです。質問票の回収やデータ入力、結果送付など個人情報を取り扱う業務を担当します。事業者は実施事務従事者を指名することもできますが、注意点として個人情報を取り扱うことになるので人事権を持たない衛生管理者やシステム部門の事務職員などを指名するようにします。外部委託することも可能ですが、返却された結果表の配布や、集団結果の閲覧、高ストレス者に対する面談の日程調整などは社内で行うことが多いため、要件に沿って社内で実施事務従事者を任命していることがほとんどです。 3.ストレスチェック担当者 事業者側で、ストレスチェックの実施計画の策定や管理を行う者です。担当者はストレスチェックの結果などの個人情報を取り扱わないため、人事課長など人事権を持つ者を指名することもできます。 4.指導を行う医師 高ストレスと評価された者に対して面接指導を行います。当該事業所の産業医や事業所の産業保健活動に従事している医師が推奨されています。外部の医師に委託することもできますが、産業医資格を有する医師に委託することが望ましいです。また、必ずしも精神科医師や心療内科医師が実施する必要はないのですが、状況によっては専門医療機関へ受診勧奨の要否も判断する必要があるため、メンタルヘルスに関する知識や技術を持つ医師がよいでしょう。 ストレスチェックの実施方法 ストレスチェックはどのように実施すればいいのでしょうか。実施の流れについて確認していきましょう。 導入前の流れ 実施にあたり、会社内でストレスチェックを導入することが必要になりますので、まずはその流れを記載します。 1. 会社としてストレスチェックを実施する旨の方針を示す2. 衛生委員会でストレスチェックの実施方法などを話し合う3. 衛生委員会で話し合った決定事項を社内規定として明文化し、従業員へ内容を周知する4. 実施体制の構築と役割分担を行う 2の衛生委員会で話し合う必要がある項目(主なもの)については以下の事項です。 ・ストレスチェック実施者は誰か ・いつ実施するのか ・どんな質問票を使うか ・高ストレス者の選定方法はどうするのか ・面接指導の申し込み窓口は誰か ・面接指導は誰に依頼するのか ・集団分析はどのような方法で行うか ・ストレスチェックの結果は誰が、どこに保存するのか 実施の流れ 1.従業員へ質問票を配布して、記入してもらうストレスチェックで用いる質問票について、どんな質問票を用いるかは事業者側で選択できます。オンラインでも紙媒体でも可能です。質問票には既定の項目を含む必要があり、もし何を使うか迷う場合は厚労省が推奨する57項目の質問票を使用することもできます。 [質問票に含む内容] ・ストレスの要因 ・ストレスのよる心身の自覚症状 ・周囲のサポート状況 2. 記入が終わった質問票は、医師等の実施者(またはその補助をする実施事務従事者)が回収第三者や人事権を持つ職員が調査票の中身を確認することはできません。 3.回収した調査票を、医師などの実施者がストレスの程度を評価し、高ストレスで医師の面接指導が必要な者を選定する高ストレス者とは、ストレスの自覚症状が高い人や、自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い人のことです。選定方法の一例として、以下の基準で行っていきます。 ①心身の自覚症状があり対応が必要な従業員が含まれている可能性が高い「心身のストレス反応」の評価点数が高い者を選ぶ。 ②「心身のストレス反応」の評価点数が高いものだけ選ぶと、仕事が非常に多い人や周囲のサポートが全くないが、まだ自覚症状が顕著に現れていない人を見逃す可能性があるため「心身のストレス反応」の評価点数が一定以上あり、かつ「仕事のストレス要因」と「周囲のサポート」の評価点数が著しく高い者も選定する。 参照 厚労省:ストレスチェック制度導入マニュアル 4. 結果(ストレスの程度の評価結果、高ストレスか否か、医師の面接指導が必要か否か)は、実施者から直接本人に通知するストレスチェックの結果は事業者には返却しません。もし事業者に提出する場合は、従業員本人の同意を得た上で開示します。 5. 結果は、医師などの実施者(またはその補助をする実施事務従事者)が保存結果を企業内の鍵のかかるキャビネットやサーバー内に保管することもできますが、第三者に閲覧されないよう、実施者(またはその補助をする実施事務従事者)が鍵やパスワードの管理をします。 6. 高ストレス者に対して医師が面接指導を実施当該事業場の産業医や事業場の産業保健活動に従事している医師が高ストレス者に対して面接指導を行います。 7. 医師が面接指導した内容を事業者に報告する面接指導を担当した医師は、個人情報へ十分な配慮をした上で、面接指導で聴取した内容のうち、労働者の安全や健康確保のために事業者に伝える必要がある情報について事業者へ提供します。就業上の措置に関する医師の意見は、本人の安全や健康を確保するために不可欠であると考えられる情報に限定・加工するなど労働者本人の意向も十分配慮したものにしましょう。 8.面接指導の結果を保存する事業者は、面接指導の結果の記録(面談記録)についても、5年間保存義務があります。 ストレスチェックにおける産業医の関わり 産業医はストレスチェックにどのように関わるのでしょうか。産業医は主にストレスチェックの実施者や面接指導の実施者として関わってきます。 実施者としての役割 ストレスチェックにおける産業医の役割は大きく分けて4つあります。 1.ストレスチェック実施者となる ストレスチェックを外部へ委託する際も、産業医などの事業所の産業保健スタッフが共同実施者として関与し、個人のストレスチェックの結果を把握するなど、外部機関と事業所内の産業保健スタッフが連携することが望ましいとされています。産業医が共同実施者でないと、ストレスチェックの結果を本人の同意なく把握することができないことがあり、十分な対応を行うことが難しくなります。 2.ストレスチェック結果の評価 結果を分析し、医師による面接指導の必要があるのかを確認していきます。システムを活用している場合は、システムでの自動判定によって高ストレス者が選定されることが多くあります。 3.高ストレス者に対して面接指導を実施する 従業員の心身や勤務の状況などを確認し、その従業員のメンタルヘルス不調のリスクを評価し、本人に指導を行っていきます。 4.高ストレス者への対応 従業員がストレスチェックの結果を受け取り、本人から申し出があった場合(結果を受け取ってから概ね1ヶ月以内)、産業医との面談を設定していきます。面接指導は申し出があってから概ね1ヶ月以内に行います。面接指導は、当該事業所の産業医が行うこともあれば、外部のクリニックで行うことも可能です。会社は、面接指導を実施した医師から、就業上の措置の必要性の有無とその内容について、意見を聴き(面談後1ヶ月以内)、それを踏まえて、労働時間の短縮など必要な措置を実施していきます。 ストレスチェック実施上の注意点 ストレスチェックを実施上で注意すべきことは、2つあります。「不利益な取り扱いの防止」と「プライバシーの保護」です。順に確認していきましょう。 不利益な取り扱いの防止 ストレスチェックを受けないこと、事業者へのストレスチェック結果の提供に同意しないこと、高ストレス者として面接指導が必要と評価されたにも関わらず面接を申し出ないこと等を理由とした不利益な扱いや解雇、雇止め、退職勧奨、不当な配置転換、職位変更は禁止されています。 プライバシーの保護 ストレスチェックの結果は要配慮個人情報であるため、実施者から本人へ直接通知し、本人の同意がなければ事業者へ提供してはいけません。ストレスチェックで個人情報を取り扱った者は法律で守秘義務が課され、違反した場合は刑罰の対象となりますので取り扱いは慎重に行います。 ストレスチェックについてもっと知りたい方は以下の記事もご確認ください。50人超えたら実施義務発生、ストレスチェック基本の「き」初心者でも安心!ストレスチェック結果報告書の作成から提出まで(記入例つき)どうしたら良いの?ストレスチェック、面談希望のない高ストレス者への対応 まとめ ストレスチェック制度の目的や実施の流れ、産業医の関わりなどは理解できましたでしょうか?従業員のメンタル不調を防止していくためには、ストレスチェックを実施し、高ストレス者に対して適切な対応をしていく必要があります。 ストレスチェックに関する課題はエリクシアで解決! 毎年のストレスチェックは形骸化していませんか?当社では「従業員にとってはストレスチェック、組織にとっては従業員意識調査」というコンセプトのストレスチェック『ココロモニター』の実施やその後の面談指導を含めた対応までしっかり支援しています。>詳しくはこちらへ
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