「復職可能」の診断書が出たら復職OK?判定は誰がする?復職対応の基本を解説! 2022/01/14 2023/08/29 メンタルヘルス 会社は「復職可能」の診断書とどう向き合うべきか? 復職対応は、人事業務のうち判断が難しい業務の1つと言われています。実際、弊社にも下記のようなお悩みの声がよく届きます。 ・「主治医の診断書は復職可能と書いてあるけど、まだ大丈夫そうには見えない」・「とりあえず復職可能の診断書が提出されたら復職させてしまっている」・「主治医の意見と産業医の意見に食い違いがある」 「休職」の診断書が提出された場合は、診断書が提出された翌日、もしくは診断書で指定された日に休職に入ることが原則ですが、復職も主治医が許可した翌日から勤務を開始して問題ないのでしょうか。また、主治医が「復職可能である」と診断した場合、会社は必ず復職させるべきなのでしょうか。 復職判定は会社が行う重要な対応の一つです。今回は、復職可の診断書が出た後のよくあるトラブルから、復職における主治医・産業医・会社それぞれの役割を確認し、復職の基本対応について確認していきましょう。 ※休職について解説した記事はこちら突然、「休職を要する」診断書が出た、さてどうする? この記事でわかること(目次)会社は「復職可能」の診断書とどう向き合うべきか?復職対応でよくあるトラブルよくあるトラブル1 復職可能の診断書が出たけど全く状態が良くないよくあるトラブル2 判定の基準、戻し方に基準がないよくあるトラブル3 戻る部署がないため復職させない、解雇に持ち込む復職における、主治医・産業医・会社の役割をおさえる主治医の役割産業医の役割会社の役割まとめ復職に関する課題はエリクシアで解決!すべて表示 復職対応でよくあるトラブル 復職対応は会社や部署によって発生頻度が異なりますので、対応したことのない方もいらっしゃるかもしれません。まずは、復職対応を行う際によくあるトラブルを確認することで、復職対応の重要性や何に気を付けるべき点があるのかを感じていただければと思います。ぜひ場面を思い浮かべながら読んでみてください。 よくあるトラブル1 復職可能の診断書が出たけど全く状態が良くない 復職可能の診断書が提出されたものの、本人の様子を見ると明らかに具合が悪そうな(状態が良くない)場合、会社としてはどう対応したらよいでしょうか。診断書通り復職させて問題ないのでしょうか。 例1 復職可の診断書が出たので、復職させた場合 ・復職したが、体調不良で遅刻・欠勤を繰り返しており、業務に手がつかない様子がみられる ・本人に体調の確認や受診を提案するも「大丈夫です」の一点張り ・本人が働けない分、他のメンバーがサポートに追われ、次第に現場全体で疲弊感が増す 復職可能と診断されたのに状態が悪いケースが起こる背景には、「主治医は日常生活における病状の回復の程度を確認していることが多く、職場での業務遂行能力の回復まで必ず把握できているわけではない」ということが挙げられます。 また、本人の復職への強い希望や、経済的な事情等から状態が不安定でも、復職可能としてしまうケースも中にはあります。そのため、診断書通りに復職させると、想定よりも業務を行うことができず、サポートのために現場が疲弊したり、人事対応が増えたりすることがあります。何より、本人の状態が悪化し再休職となってしまうことや、想定していたよりも完全な復帰までに時間がかかってしまうこともあります。そのため、復職可能の診断書が提出されてもすぐに復職させるという判断をせず、産業医の意見も聞きながら復職判定を行うことが必要です。 よくあるトラブル2 判定の基準、戻し方に基準がない 復職の判定基準を明確に設けていない場合、それがトラブルの要因につながることがあります。明確な基準がないと、判定基準が従業員によって変わる、人事担当者や部署によって異なるなど、ケースごとにバラバラに対応することになってしまいます。 例2 休職の原因はメンタル不調で同じだが、復職後の対応がバラバラ ・Aさんはメンタル不調による休職から復職後、主治医の診断書に従い週3日時短で働いている ・Bさんはメンタル不調による休職から復職後、特別に在宅勤務をしている ・Cさんはメンタル不調による休職から復職後、1カ月は週2日、2カ月目は週3日と段階的に就業を増やしている この場合、結果として対応工数が増えるだけでなく、会社としての統制がとれない、人事側の管理や手間が増える、休職中の従業員は復職基準がわからず会社へ不信感・不公平感が増える、復職後の再休職リスクが高くなるなど様々な問題が起こります。 けがや入院が原因の復職と違い、特にメンタル疾患の場合は再発リスクも考える必要があります。「労働契約上の所定労働時間(週5日フルタイムなど)で働けることを復職判定の基準とする」など、一定の明確な基準をもって判定することで復職する本人や現場管理職、会社が共通認識で復帰後のイメージを持ちながら復職判定を行うことをおすすめします。 よくあるトラブル3 戻る部署がないため復職させない、解雇に持ち込む 復職対応は時として訴訟問題に発展する危険性も含んでいます。 例 復職させたいが戻せる部署がないケース ・元の部署が受入れを拒否しているため、本人に異動を打診したが、元の部署を希望された ・これまでの態度の悪さが全社的に知られており、異動の受け入れ先が見つからない 原則として、「休職者の復職先は元の慣れた職場」です。まれに、不調のきっかけや原因が異動してきたことによる場合は、配置転換や異動をすることもありますが、基本的には元の部署へ復帰が原則です。理由は、新しい環境に適応するために心理的な負担がかかってしまい、その負担から不調が再発・再燃する可能性があると言われているためです。 一方で、本人の希望やスキルのミスマッチなどにより元の部署へ戻せない、もしくは既に人員補充をしてしまい戻せる場所がない、といった相談も弊社にときどき届きます。戻る部署がないから復職させないという対応はNGです。万が一、戻る部署がなくて復職させなかった場合、従業員とトラブルに発展し訴訟されてしまうリスクもあるため、産業医や弁護士などへ相談しながら対応を検討するなど、慎重に対応していく必要があります。 例外もあります。職種を限定して契約を結んでいる従業員は契約上での提供すべき業務が提供できない場合、契約変更や退職となることはありえます。例えば、ドライバーとして雇用したのに運転業務ができなくなってしまった場合などです。 このように復職対応は雇用契約に関連することもあるため、対応を誤るとトラブルになる可能性があります。それを防ぐために、復職対応フローをあらかじめ整備し、会社としての対応方法を考えておく必要があります。次の章から確認していきましょう。 復職における、主治医・産業医・会社の役割をおさえる 主治医から「復職を可能とする診断書」が提出されることは復職における必要条件です。加えて、産業医の意見も考慮しながら、会社が最終的な決定をします。それぞれの役割を確認しておきましょう。 主治医の役割 ①治療方針を決定 主治医は、本人と相談しながら治療方針を決定します。復職後も通院をする場合、診察で状態把握をしながら服薬調整や必要な治療を実施していきます。 ②復職可能の診断書を作成 休職の途中でかかりつけ医を変更していない限り、復職時の診断書は休職時と同様の主治医が作成します。一般的に主治医は職場の状況や仕事内容を細かくは知らないため患者が復帰後に行う業務内容を正確に把握することは難しいです。そのため、主治医から復職可能の診断書が出たとしても、職場で求められる業務遂行能力まで必ずしも回復しているかどうかは実際に業務をやらせてみないとわからない、ということに留意しましょう。 産業医の役割 ①復職前の本人の状態の把握および復職に関する意見書を提出 産業医は面談を通し、本人の心身の状態確認と職場で求められる業務遂行能力が回復しているかを確認します。そして会社に対して、従業員が復帰後に置かれる可能性がある作業環境・業務内容を踏まえ意見を述べます。主治医による診断書と、産業医による意見書の違いは、産業医は医学的知識だけでなく、産業保健における知識もあるため、「健康と労働を両立できるか」を考慮したうえで、意見を出すという点です。 ②復職後、会社・本人と連携して復職後サポート 産業医は復職後も定期的な面談で本人の状態把握を行います。就業上の配慮や懸念事項があれば随時本人や会社へアドバイス・意見を行います。 ※産業医に相談できる内容は下記の記事で解説しています 健康相談・メンタルヘルスだけじゃない!産業医が対応できる5つの相談ジャンル 会社の役割 ①復職に向けて、本人・現場・産業医などの関係者と調整 会社つまり人事担当者は、復職に向けて、本人・現場・産業医とさまざまな調整を行います。復職を予定している部署の担当者と、復職予定日や復職後の対応について共有し、受け入れる現場側の不安材料もヒアリングします。また、産業医と本人の状態や診断書の取得見込み時期を共有し、産業医面談の日程調整を行い、今後の方針の相談や会社対応に関して意見を求めます。 ②明確な復職基準を設定、最終的な復職判定 「復職をさせるか」の最終判断は会社が決定します。復職判定委員会が設置されている会社は委員会で決定することもあります。設置していない会社は、人事部や産業保健職などが話し合い、最終的に決定します。復帰判定の判断材料を確認しておきましょう。 ◆復職判定の判断材料 ✓主治医の診断書 ✓従業員の復職に対する意思、本人の状態 ✓産業医の意見 ✓職場環境などの評価:業務と職場の適合性や現場の準備状況を確認する ✓その他 本人の行動特性や家族のサポート状況を確認し対応を検討。職場復帰の阻害要因も確認 ③復職後のプログラム作成・復職後フォロー 復職プログラムとは、完全復帰に向けた「助走期間」です。会社によっては、数日~週間の試し通勤や、数カ月は残業制限を行う等、特定の復職プログラムを用意していることもありますので、復職判定の基準と合せて、復職後の対応も用意しておくとよいでしょう。復職後フォローとは、復職後一定期間、定期面談など行うことです。本人の状態にもよりますが、復職後数カ月は人事や産業医による定期面談を設けるなどし、再発リスクの防止や、復職後の適応状況について確認します。復職後の対応を円滑に進めるためにも、あらかじめ休職時点から復職可能の診断書が提出された時点、復職面談、復職判定、復職プログラムなど、対応フェーズに応じてフローを作成しておくとよいでしょう。 まとめ 復職判定は会社が行います。そのため、復職可能の診断書が出た際は、診断書の意見のみで判断せず、産業医の意見を参考にしながら、本人の意思・状態を踏まえて、職場で働くことができるか会社が最終判断を行うことが重要です。復職後は、徐々に業務や環境に慣れてもらうためにも、試し通勤や就業上配慮(残業制限等)も行いながら完全復帰を目指していきます。復職対応時は本人だけでなく現場管理職や同僚などステークホルダーが多いことからも人事担当として対応に悩むことが多いかもしれません。そのようなときには、会社の業態や環境を理解している産業医に適宜相談しながら対応検討を行いましょう。 復職に関する課題はエリクシアで解決! 復職判定時に主治医の診断書のみで判断していませんか?当社産業医サービスでは「企業主体で復職判定を行う」ことを支援。 主治医および産業医の意見をもとに企業が復職判断するための基準と仕組みの設定および運営支援を行います。>詳しくはこちらへ