突然の臨検でも大丈夫!適正な過重労働管理のための3つのポイント

突然の臨検でも大丈夫!適正な過重労働管理のための3つのポイント

過重労働管理の基本と臨検を乗り切るために気を付けたいこと

あなたの会社では、健康障害や労働災害の発生予防のために長時間労働者に対して自信を持って「正しい対応」が行えているでしょうか?長時間労働は、労働者はもちろんのこと、会社にとってもマイナスの影響を及ぼしやすく、労働基準監督署の臨検監督(臨検)でも指摘されやすいです。今回は、臨検も踏まえた過重労働管理の方法について確認していきましょう。

過重労働管理のご相談はエリクシアまで
この記事でわかること(目次)
  • 過重労働管理の基本と臨検を乗り切るために気を付けたいこと
  • 長時間労働の基準と会社に及ぼす影響
  • 最低限押さえたい3つの過重労働管理ポイント
  • 臨検指導を乗り切るための3つの注意点
  • まとめ
  • 時間外労働が多い従業員への対応はエリクシアで解決!
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    長時間労働の基準と会社に及ぼす影響

    日本では、長らく「勤労=美徳」とされ、長時間労働が黙認されていた時代がありました。しかし、近年では長時間労働による過労死が問題視されており、是正する動きが盛んになっています。今回の記事では、長時間労働とはそもそも何時間以上の時間外・休日労働のことを言うのか、長時間労働が及ぼす会社への影響について解説していきます。

    そもそも「長時間労働」とは?

    長時間労働」の判断基準をご存じでしょうか。何時間以上の時間外労働・休日労働を「長時間労働」と判断していますか。

    実は、長時間労働と認定される時間は法的に決められているわけではありません。しかし、一般的に判断に使われている基準は大きく2つあります。

    基準1.36協定の上限

    労働基準法では、法定労働時間1日8時間・週40時間と定められています。しかし、忙しい時期にはどうしてもその法定労働時間を超えてしまう場合があるかと思います。その場合、労使間であらかじめ36協定の締結をしなければなりません。36協定では、時間外労働は原則月45時間、年360時間以内と定められています。もし、原則の上限も超えてしまうときは、さらに特別条項を結ぶ必要があります。

    基準2.過労死ライン

    厚労省では「月45時間以上の残業は健康障害のリスクが高まる」と明言しています。さらに、月100時間超、あるいは2-6カ月の期間のうち平均80時間を超える残業は健康障害のリスクが高く、危険ラインと言われています。

    上記2つの基準を踏まえ、時間外・休日労働が月45時間を超えてきたら要注意と覚えておきましょう。過重労働は労働時間のみを基準として判断されるわけではありませんが、労働時間は数値で把握しやすく、過重労働の判断の基準として最も多く使われています。本コラムでは、過重労働の中でも、「長時間労働」に着目して過重労働管理について解説していきます。

    長時間労働が及ぼす会社への悪影響

    長時間労働は、会社に様々な悪影響を及ぼします。例えば、残業代の増加労働生産性の低下労災のリスクが高まる企業イメージの低下といった悪影響があります。さらに、時間外労働を放置していると、労働基準監督署(以下労基署)からの指導・是正勧告を受けるだけでなく、最悪の場合、送検される可能性もあります。実際に、近年では大手コンサルティング会社が、労働者に法定労働時間である週40時間を超えて、月計143時間余りの残業をさせていた疑いがあるとされ、書類送検されています。同社では、月100時間未満の残業を可能とする特別条項付き36協定を締結してはいたものの、不備があり無効であったとのことです。このように、長時間労働は会社に対して様々な悪影響を及ぼしますので、適正な過重労働管理を行わなければなりません。次の項から具体的な過重労働管理のポイントについて解説していきます。

    最低限押さえたい3つの過重労働管理ポイント

    次は、適切な過重労働管理とは具体的に何をすればいいのかについて、解説していきます。過重労働管理のポイントとしては大きく3つあります。「適正な勤怠管理」、過重労働対象者への「疲労蓄積度と面談希望の確認」、「産業医面談の実施」です。

    1.適正な勤怠管理

    あなたの会社では、どのように勤怠管理をおこなっているでしょうか?過重労働管理には正しい労働時間の把握が必要不可欠です。適正な勤怠管理ができていないと、労働者に健康被害が発生し過労死のリスクが高まります。また、労基署の臨検が入ったときに行政指導の対象となることや、さらに時間外労働に対する賃金の未払いが発生するなどトラブルになる可能性があります。適正な勤怠管理の例としては、「客観的な記録を利用する」ことが有効です。近年、在宅ワークが普及した影響もあり、労働者の勤怠状況が把握しにくくなったという会社もあるかもしれません。労働者本人の申告だけに頼るのではなく、客観的に見える方法で勤怠管理を行っていくことをお勧めします。
    例)タイムカードやICカード、パソコンのログイン情報など

    また、「残業を事前申請にする」という方法もあります。時間外労働を行わざるを得ない場合は、事前に管理監督者への承認を取る形にするといいかもしれません。勤怠の記録は必ず3年間保存※するようにしましょう。

    ※2020年の民法改正に伴い、賃金債権等に係る消滅時効は5年に延長されることになりましたが、当分の間は、経過措置として3年となっています。

    2.疲労蓄積度と面談希望の確認

    長時間労働者に対する疲労蓄積度チェックの実施は義務ではありませんが、厚労省では、長時間労働者に対して疲労蓄積度を確認するためのチェックリストを作成し、過重労働面談に活用することを推奨しています。疲労蓄積度チェックリストを活用する目的としては2つあり、①労働者の疲労蓄積度把握のため②労働者が産業医面談を希望する意思を示す申し出の代わりです。会社は法的に、月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面談希望を申し出た者に対して、産業医面談を実施する義務があります。そのため、最低でも月80時間超の労働者は疲労蓄積度チェックリストを活用し、疲労蓄積度を確認し、面談希望の有無を聴取するようにしましょう。過重労働管理に力を入れたい、という会社はそれ以下の月45時間超や60時間超でチェックリストを配布しても大丈夫です。

    厚労省の疲労蓄積度チェックリストはこちら

    3.産業医面談

    疲労蓄積度のチェックと医師による面談希望の有無を聴取したら、次は産業医による面談の実施です。法律では、「長時間労働による脳・心臓疾患の発症を予防するため、疲労の蓄積した労働者に対し、事業者は医師による面接指導を行わなければならない」とされています。また、面談によって医師から聴取した意見をもとに必要な措置を取るように努めなければなりません。面談後は、面談指導等の記録を5年間保存するようにしましょう。産業医面談の対象者は、下記3つの「労働者」、「研究開発業務従事者」、「高度プロフェッショナル制度適用者」に分かれますが、それぞれ面談が義務である者と努力義務である者の基準があります。下の表にまとめましたので、ご参照ください。

    労働者 (裁量労働制、管理監督者を含む)研究開発業務従事者高度プロフェッショナル制度適用者
    産業医面談が義務になる者・月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面談を希望する者・月100時間超の時間外・休日労働を行った者
    ・月80時間超の時間外/休日労働を行い、疲労蓄積があり面談を希望する者
    ・1週間あたりの健康管理時間が40時間を超えた時間について月100時間超行った者
    産業医面談が努力義務になる者会社の面談基準に該当する者 例)月60時間超が3カ月連続など会社の面談基準に該当する者  面談希望者

    ※健康管理時間: 労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間。

    過重労働管理として、「1.適正な勤怠管理」「2.疲労蓄積度と面談希望の確認」「3.産業医面談」、この3つのポイントをしっかり押さえておけば、労基署の臨検が来ても慌てることはありません。

    ※長時間労働の基準や会社対応については、こちらの記事でも解説しています。
     長時間労働管理とは?管理すべき時間の基準と会社対応

    臨検指導を乗り切るための3つの注意点

    次は、実際に労基署の臨検が来てしまったときに、慌てないために日ごろから気を付けておきたいことについて解説していきます。

    臨検とは

    臨検とは、国の機関である労働基準監督署が労働基準法や労働安全衛生法などの法令違反の有無を調査することです。臨検は、2名の労働基準監督官が来て調査を行います。いつ調査に来るのかは分からないため、いつ来ても対応できるように日ごろから体制を整えておきましょう。

    臨検の種類は大きく下記表の通り4つあります。

    定期監督行政方針に従って、監督計画を策定し、それに基づいて会社に調査を行う
    申告監督労働者などが、法令違反を労基署へ申告し、それに基づいて調査を行う
    【調査パターン】 労働者からの申告内容を明かしたうえで、呼び出し状を発行労働者からの申告には触れず、定期監督のように行われる
    災害時監督労災発生時に、原因究明や再発防止のために監督を行う
    【調査タイミング】 労災により被災者が死亡した場合同時に複数人被災した場合被災者が深刻な傷害を負った場合
    再監督定期監督や申告監督が実施され、是正内容が実行されるか監督を行う
    (※実際、再監督まで実施することは少ない)
    【調査パターン】 是正勧告の違反内容が、是正されたか確認する場合是正勧告書が期日までに提出されない場合

    臨検で調査される内容は、主に書類チェックとヒアリングです。チェックする書類については、下記のような書類があります。すぐに提出できるようにしっかりと管理しておきましょう。

    ■労働基準法の遵守の証明に必要な書類
    1.企業の組織図
    2.労働者名簿
    3.賃金台帳
    4.労働条件通知書
    5.就業規則(労働時間制度などの別規程を含む)
    6.各労働者のタイムカードなど労働時間が確認できる書類
    7.各労働者の時間外労働・休日労働に関する協定届
    8.変形労働時間制を採用している場合の関係書類(労使協定、勤務割など)
    9.変形労働時間制のシフト勤務表
    10.年次有給休暇の取得状況に関する書類

    ■労働安全衛生法の順守の証明に必要な書類
    1.安全管理者、衛生管理者の選任に関する書類
    2.安全委員会、衛生委員会などの議事録
    3.安全委員会、衛生委員会などでの調査審議状況が確認できる書類
    4.産業医の選任状況と面接指導制度や実施状況が確認できる書類
    5.健康診断結果表などの実施結果

    臨検の結果、法令違反や改善が必要なところが見つかった場合、指導や是正勧告、使用停止命令を受けることになります。

    指導法令に違反するとまでは言えないが、改善の必要があると判断した場合
    →指導票を交付
    是正勧告労働基準法、労働安全衛生法などの関係法令に違反がある場合
    →是正勧告書を交付
    使用停止命令労働者に危険があり、緊急を要する場合
    →使用停止等命令書を交付(法的強制力あり)

    臨検後は、是正勧告書や指導票を指定期日までに労基署へ提出しなければいけません。もし放置していたら、書類送検されることもあるので早急に改善に取り組むようにしましょう。

    臨検に備える!日ごろから気を付けておきたい3つのこと

    臨検の中でも、長時間労働は指導や是正勧告されやすい項目なので注意が必要です。令和4年度の労基署による監督指導結果では、指導実施事業所のうち、違法な時間外労働を指導された事業所は全体の42.6%にのぼっています。また、過重労働による健康障害を防止するための措置が不十分だった事業所は全体の約40%という報告がされています。臨検では多くの事業所が長時間労働について指導・是正勧告されているのです。そのため、いつ臨検が来ても対応できるように下記3つのことを日ごろから意識しておきましょう。

    ①適正な勤怠管理
    ②過重労働管理のフローの整備(疲労蓄積度の確認、面談希望の聴取、産業医面談など)
    ③提出を要求されそうな書類を普段から整理

    まとめ

    長時間労働は、労働者に健康障害を引き起こし、脳・心臓疾患発症のリスクを高めることが明らかになっています。労働者だけでなく、会社にとってもデメリットが大きいので、適切な過重労働管理が大切です。長時間労働になった労働者には、疲労蓄積度の確認産業医による面談を確実に実施するようにしましょう。労基署による臨検でも長時間労働は指摘されやすいので、日ごろから適正な勤怠管理過重労働管理フローの整備書類の管理をしておくことをお勧めします。

    時間外労働が多い従業員への対応はエリクシアで解決!

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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    https://www.elixia.co.jp/contact/

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