50人未満の小規模事業場でも知っておきたい、安全衛生管理とは 2022/01/28 2024/04/21 衛生管理者/衛生委員会 50人を超える前からスタート?!職場における衛生管理の基本 50人以上の事業場では安全管理者や衛生管理者を選任し、衛生管理体制を整備する必要があります。では、50人未満の会社では衛生管理体制を整備する必要はないのでしょうか? 労働災害統計※によると事業場規模別の死亡災害発生状況は、50人未満の事業所が8割を占めています(令和4年度)。さらに細かく見ていくと、10人未満の事業所の割合が40%、10~29人の事業所で27%、30~49人の事業所で14%となっています。この統計から、企業の規模が小さくても労働災害は多く、たとえ事業場の規模が小さくとも安全管理や衛生管理が必要だということが分かります。 今回の記事では50人を超えていない職場、超えている職場など職場の規模別に安全管理や衛生管理はどのように行うのか解説します。ご自身の会社について思い浮かべながら確認していきましょう。 ※令和4年度労働災害統計 職場の衛生管理担当者、人事担当者の方必見「社員数が増えてきて衛生管理を整えたい」「何から何までやればよいか分からない」「他の業務が忙しくて、情報収集する時間がない」 そんな時に役立つお役立ち資料「チェックシート付!事業所規模別職場の安全衛生管理体制」をご用意しました。フォーム送信後にダウンロードURLをお送りいたします。 資料をダウンロードする この記事でわかること(目次)50人を超える前からスタート?!職場における衛生管理の基本従業員数ごとに考える安全衛生の対応基準すべての会社で対応が必要な3つの衛生管理10人未満の会社に必要な対応10人以上50人未満の会社に必要な対応50人以上の会社に必要な対応小規模事業所で産業医が必要になったら?産業医紹介会社で契約するとメリットがある地域産業保健センターでも相談が可能まとめ衛生管理体制の構築に関する課題はエリクシアで解決できます。すべて表示 従業員数ごとに考える安全衛生の対応基準 会社の安全管理や衛生管理を行うために対応が必要なものは事業所の規模によって異なります。順に確認していきましょう。 すべての会社で対応が必要な3つの衛生管理 はじめに従業員の規模に関係なく対応の必要がある衛生管理を3つ説明します。 ①健康診断の実施(労働安全衛生法第66条)雇い入れ時健康診断と定期健康診断は事業場の規模に関わらず、すべての会社で実施することが義務付けられています。また、深夜業務や有害業務に従事する従業員がいる場合は、さらに特定健診や特殊健診を実施することも定められています。自社の業態に合わせて適切な健康診断を100%受診させることが重要です。 ②医師からの意見聴取(労働安全衛生法第66条の4)労働安全衛生法では、事業者に対して、健康診断で異常所見があった労働者に対して、必要な措置について医師から意見を聴取することを義務付けています。もし産業医を選任していない場合は、近くの診療所などの医師(できれば産業医)や、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する地域産業保健センターを利用して医師から意見を聴取するようにしましょう。 ③長時間労働者への医師による面接指導(労働安全衛生法第66条の8)労働者数が常時50人未満の会社であっても、時間外労働が長時間に及ぶ労働者がいる場合には、疲労の蓄積状況の確認など、医師による面接指導を行う必要があります。また、事業者は、休憩時間を除き一週間あたり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1カ月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者からの申し出があれば、医師との面接指導を受けさせなければなりません。 10人未満の会社に必要な対応 10人未満の事業場では、衛生推進者も安全衛生推進者も選任する義務はありません。この場合は、事業主である社長などの経営者が安全や衛生について責任をもって管理しなくてはなりません。もし対応にお悩みの場合は、地域産業保健センターで健康相談窓口を開設しており、労働者の健康管理や産業保健に関する相談を受け付けていますので、相談してみることをおすすめします。 独立行政法人労働者健康安全機構が運営する地域産業保健センター 地域窓口 10人以上50人未満の会社に必要な対応 労働者数が常時10名以上50人未満の事業場では、労働安全衛生法で、「安全衛生推進者」か「衛生推進者」を選任することが義務付けられています。安全衛生推進者か衛生推進者のどちらを選任する必要があるのかは業種区分によって異なります。 安全衛生推進者が必要な業種 林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業 衛生推進者が必要な業種 上記以外の事業場 選任時期・報告安全衛生推進者または衛生推進者は選任すべき事由が発生した日から、14日以内に選任する必要があります。また選任後は、作業場の見やすい場所に掲示するなどにより、社内に周知しなければなりません。(所轄労働基準監督署への報告は必要ありません。) 選任の要件安全衛生推進者、衛生推進者は、下記の経歴・経験、講習修了者、資格を持つ人から選任します。 1. (経験・経歴)大学、高等専門学校卒業者で1年以上安全衛生の実務に従事している者 2. (経験・経歴)高等学校、中等教育学校卒業者で3年以上安全衛生の実務に従事している者 3. (経験・経歴)5年以上、安全衛生の実務に従事している者 4. (有資格者)労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等の資格を有する者 5. (講習修了者)都道府県労働局長の登録を受けたものが行う講習修了者 安全衛生推進者の場合は「安全衛生の実務に従事している者」で、衛生推進者の場合は「衛生の実務に従事している者」です。 安全衛生または衛生に関する実務に従事した経験のない人や、期間が足りない人で有資格者でもない人を選任する場合には、5の講習を修了する必要があります。講習は学歴・経験などは不問で、誰でも受講することが可能です。 安全衛生推進者・衛生推進者の職務安全衛生推進者と衛生推進者は下記の業務を担当し、職場の安全衛生を確保しなければなりません。 (1) 施設、設備等(安全装置、労働衛生関係設備、保護具等を含む。)の点検及び使用状況の確認並びに、これらの結果に基づく必要な措置に関すること (2) 作業環境の点検(作業環境測定を含む。)及び作業方法の点検並びに、これらの結果に基づく必要な措置に関すること (3) 健康診断及び健康の保持増進のための措置に関すること (4) 安全衛生教育に関すること (5) 異常な事態における応急措置に関すること (6) 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること (7) 安全衛生情報の収集及び労働災害、疾病、休業等の統計の作成に関すること (8) 関係行政機関に対する安全衛生に係る各種報告、届出等に関すること。 ただし、衛生推進者は上記の中でも衛生に係る業務に限ります。 50人以上の会社に必要な対応 常時50人以上の労働者を使用する事業場では、業種区分や事業場の規模に応じて「①衛生管理者」「②安全管理者」「③総括安全衛生管理者」「④産業医」など選任が必要です。それぞれがどのような職務を担うのか詳しくみていきましょう。 【①衛生管理者】 衛生管理者の選任が必要な業種・事業場衛生管理者は事業場の規模によって選任する人数が変化します。 事業場の労働者数衛生管理者の選任人数10~50人未満衛生推進者を選任50~200人1名以上201~500人2名以上501~1000人3名以上1001~2000人4名以上2001~3000人5名以上3001人~6名以上 また、次に該当する事業場は、衛生管理者のうち1人を専任としなければなりません。 ・業種にかかわらず常時1,000人を超える労働者を使用する事業場 ・常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働または一定の有害な業務に常時30人以上の労働者を従事させるもの ※なお、常時500人を超える労働者を使用する事業場で、エックス線等の有害放射線にさらされる業務や鉛等の有害物を発散する場所における業務などに常時30人以上の労働者を従事させる場合は、衛生管理者のうち1人を、衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任することが必要です。 衛生管理者の職務衛生管理者は主に次の業務を行います。 ・少なくとも毎週1回作業場を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときに、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置の実施 ・健康に異常がある者の発見及び処置 ・作業環境の衛生上の調査 ・作業条件、施設等の衛生上の改善 ・労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備 ・衛生教育、健康相談その他の労働者の健康保持に関する必要な事項 ・労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成 ・その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における衛生に関し、必要な措置 ・衛生日誌の記載等職務上の記録の整備 選任時期・報告衛生管理者は選任すべき事由が発生してから14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署に報告する必要があります。 ※衛生管理者についてはこちらの記事でも解説衛生管理者が不在になってしまった!どうすればいいの? 【②安全管理者】 安全管理者の選任が必要な業種・事業場安全管理者を選任しなければならない業種及び事業場は次の通りです。 安全管理者を選任すべき業種 林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業 安全管理者を選任すべき事業場の労働者数 :50人以上 また、上記の業種の中でも、事業場の労働者数に応じて、安全管理者のうち少なくとも1人を専任する必要が生じるため注意が必要です。 安全管理者の職務労働安全衛生法第11条では、一定の業種及び規模の事業場ごとに「安全管理者」を選任し、その者に安全衛生業務のうち、安全に係る技術的事項を管理させることと定めています。安全管理者は、主に次の業務を行います。 ・建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置 ・安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的点検および整備 ・作業の安全についての教育及び訓練 ・発生した災害原因の調査及び対策の検討 ・消防及び避難の訓練 ・作業主任者その他安全に関する補助者の監督 ・安全に関する資料の作成、収集及び重要事項の記録 ・その事業の労働者が行なう作業が他の事業の労働者が行なう作業と同一の場所において行なわれる場合における安全に関し、必要な措置 ・作業場等を巡視し、設備作業方法等に危険のおそれがあるときは、その危険を防止するために必要な措置 安全管理者の資格条件(1) 厚生労働大臣の定める研修を修了した者で、次のいずれかに該当する者 1.大学の理科系の課程を卒業し、その後2年以上産業安全の実務を経験した者 2.高等学校等の理科系の課程を卒業し、その後4年以上産業安全の実務を経験した者 3.その他厚生労働大臣が定める者(理科系統以外の大学を卒業後4年以上、同高等学校を卒業後6年以上産業安全の実務を経験した者、7年以上産業安全の実務を経験した者等) (2) 労働安全コンサルタント 選任時期・報告安全管理者は、選任すべき事由が発生してから14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署に報告する必要があります。 【③総括安全衛生管理者】 総括安全衛生管理者の選任が必要な業種・事業場 総括安全衛生管理者の選任が必要な業種及び事業場は、以下の1~3の業種区分に応じ、それぞれ、決まった数以上の労働者を常時使用する事業場で選任する必要があります。 事業場の労働者数業種100人以上林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業300人以上製造業(物の加工を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業1000人以上その他の業種 総括安全衛生管理者の職務総括安全衛生管理者の選任が必要となった事業者は、総括安全衛生管理者を選任し、その者に、安全管理者、衛生管理者又は労働者の救護に関する技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければなりません。 ・労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること ・労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること ・健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること ・労働災害の原因の調査および再発防止対策に関すること ・その他労働災害を防止するために必要な業務 総括安全衛生管理者の資格条件総括安全衛生管理者は、事業場においてその事業の実施を統括管理する者とされています。具体的には工場長、作業長等名称問わず、その事業場において事業を実質的に統括管理する権限および責任を有す人が総括安全衛生管理者となります。 選任時期・報告総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生してから14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署に報告する必要があります。 【産業医】 産業医の選任が必要な業種・事業場産業医は、常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任しなければなりません。産業医の選任が必要な業種及び事業場は次の通りです。 事業場の労働者数産業医の選任人数0~49人必要なし50~999人1名以上(嘱託可)1000~3000人産業医1名以上(専属)3001人以上産業医2名以上(専属) 産業医の職務産業医の職務は労働安全衛生法第13条ならびに労働安全衛生規則第14条1項で定められており、主に以下の業務を行います。 ・健康診断及び面接指導等の実施ならびにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること ・作業環境の維持管理に関すること ・作業の管理に関すること ・労働者の健康管理に関すること ・健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること ・衛生教育に関すること ・労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること ・職場巡視 産業医の資格条件産業医は医師であれば誰でもなれるわけではなく、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識について所定の要件を備えた者でなければならないとされています。 <産業医になるための要件> 1.厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者 2.産業医の養成課程を設置している産業医科大学、その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者 3.労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者 4.大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者 選任時期・報告産業医は選任すべき事由が発生してから14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署に報告する必要があります。 小規模事業所で産業医が必要になったら? 50人未満の事業場が、「長時間労働となった従業員に産業医面談を行いたい」、「健康診断の結果を産業医に確認してもらわなければならない」という状況になった場合、どうすればよいのでしょうか?2つ方法があります。紹介会社経由で産業医契約を結ぶ方法と地域産業保健センターを利用する方法です。 産業医紹介会社で契約するとメリットがある 産業医紹介会社とは、産業医の紹介を中心にサービス提供をしている会社を指します。紹介会社経由で産業医を契約するメリットは3つです。 1 自社のニーズに合った産業医に出会える紹介会社が事業所ごとの要望に合わせた産業医を紹介してくれます。万が一、紹介された産業医が自社にあわないと感じた場合、紹介会社を通じて申し出ることで産業医を変更することもできるため、会社側の負担は少ないです。 2 サポートが充実している紹介会社の中には、紹介後のサポートにも力を入れているところが多くあります。産業医は法律に基づいた職務を行うことが仕事です。そのため、衛生委員会の運営方法や、健康管理フロー、休職者が出た際の対応などアドバイスは行うものの、細かい対応は会社で完結まで行います。紹介会社のサポートがあると、所轄の労働基準監督署に提出する書類作成のサポートや衛生管理体制整備の支援など、業務に関するさまざまな調整やフォローをしてくれますので心強いでしょう。 3 料金が明確3つ目は、料金設定が明確であることです。紹介会社では、産業医の報酬を明示しているため、コスト管理がしやすく、事業所の予算に合わせて産業医を選ぶことや勤務日数を設定することが可能です。月額顧問料での契約がほとんどですが、紹介会社によってはスポットでの対応も受け付けています。困ったときや、気軽に相談がしたい場合には、月額顧問契約で定期的な関わりを持つ産業医を作っておくと安心です。 地域産業保健センターでも相談が可能 地域産業保健センターは、全国各地にあり、無料で産業保健のサービスを提供しています。健康診断の結果の相談や、保健指導、産業医の面談などを依頼できます。産業医の選任ではないので、毎回別の産業医が担当となる場合もありますが、コストを抑えたい事業主の方におすすめです。 独立行政法人労働者健康安全機構が運営する地域産業保健センター 地域窓口 まとめ 労働者数が50人に満たない小規模事業所であっても、従業員の安全や健康に配慮する必要があります。心身の健康は、働く上での基盤ですので、経営の観点からも安全管理や衛生管理にきちんと取り組むことが大切です。安全衛生の推進者や管理者の選任条件は、業種や労働者数によって異なりますので、法令をしっかりと把握したうえで、選任や届け出を行いましょう。 エリクシアでは50人未満の小規模事業所ともご縁をいただいております。産業医は不要だけど衛生管理の相談先が欲しい…、50名超えに備えて衛生管理体制を整えておきたい…、メンタルヘルス対応体制やフローを作りたい・・・といったお客様のご要望・ご相談内容に合わせてご提案しています。ぜひお気軽にご相談ください。 職場の衛生管理担当者、人事担当者の方必見「社員数が増えてきて衛生管理を整えたい」「何から何までやればよいか分からない」「他の業務が忙しくて、情報収集する時間がない」 そんな時に役立つお役立ち資料「チェックシート付!事業所規模別職場の安全衛生管理体制」をご用意しました。フォーム送信後にダウンロードURLをお送りいたします。 資料をダウンロードする 衛生管理体制の構築に関する課題はエリクシアで解決できます。 事業場の従業員が50人を超えると、産業医や衛生管理者の選任、ストレスチェックの実施報告など様々な義務が発生。義務化への対応だけでなく、人事担当者が今後ラクに安心して運用していける衛生管理体制の構築を支援します。 詳しくはこちらへ