会社が知っておくべき!「雇入れ時健康診断」の基本のき 2022/04/08 2022/05/20 健康管理 雇入れ時健康診断を適切に実施していますか? 事業者に法律で義務付けている健康診断はいくつかあります。 その中でも「定期健康診断」と「雇入れ時健康診断」は、すべての会社において実施することが義務付けられていますが「実施して満足」になっていませんか。実施する目的をきちんと理解して健康管理を行えば、事業者としての義務を果たすだけでなく、会社としてのリスク回避にもつながるため、適切に実施する必要があります。 今回は、「雇入れ時健康診断」について、基礎知識から注意すべきポイント、よくある質問まで説明します。 この記事でわかること(目次)雇入れ時健康診断を適切に実施していますか?「雇入れ時健康診断」とは?定期健康診断とどう違う?対象者を確認しましょう法定検査項目を確認しましょう定期健康診断との違いは?注意すべきポイント2つ実施する目的を確認!不当な扱いに利用しないリスクが潜んでいる?実施時期に注意しましょう「雇入れ時健康診断」でよくある質問3つ前職の定期健診の結果を雇入れ時健診に代用できる?「個人情報だから健診結果を提出したくない」と言われたら?4月入社の雇入れ時健診を6月の定期健診とまとめられる?まとめ健康診断管理に関する課題はエリクシアで解決!すべて表示 「雇入れ時健康診断」とは?定期健康診断とどう違う? 就職や転職の内定時、入社直後に実施する健康診断が「雇入れ時健康診断」です。一度は受けたことがあるのではないでしょうか? 雇入れ時健康診断は、労働安全衛生規則第43条で「事業者が常時使用する労働者を雇い入れるときに、医師による健康診断を実施すること」として義務付けられています。適切に実施するために、対象者と法定検査項目について確認しておきましょう。 対象者を確認しましょう 雇入れ時健康診断の対象者は、常時使用する労働者で定期健康診断の対象者と同じです。常時使用する労働者とは、正社員だけでなく「労働時間」および「雇用期間」の要件を満たすパートやアルバイトも含まれます。 常時使用する労働者の条件〈労働時間〉1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である〈雇用期間〉以下のどちらかに該当①期間の定めのない契約により使用される者であること②期間の定めがある契約により使用される者は、1年以上使用することが予定されている者、および更新により1年以上使用されている者※特定業務従事者健診(安衛則第45条の健康診断)の対象となる者の雇入れ時健康診断については、6カ月以上使用されることが予定されているか、更新によって6カ月以上使用される者 なお、通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても、「常時使用する労働者」とみなし、雇入れ時健康診断を行うことが望ましいとされています。 その他、誰に何を受けさせるかについては、下記の記事で解説しています。 企業で実施する健康診断 誰にどれを受けさせる?何に注意すべき? 法定検査項目を確認しましょう 雇入れ時健康診断の法律で決められた検査項目は全部で11項目あります。 〈法定検査項目〉①既往歴および業務歴の調査②自覚症状および他覚症状の有無の検査③身長、体重、腹囲、視力および聴力(1,000Hzおよび4,000Hzの音に係る聴力)の検査④胸部X線検査⑤血圧の測定⑥貧血検査(色素量および赤血球数)⑦肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)⑧血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)⑨血糖検査⑩尿検査(尿中の糖、蛋白質の有無)⑪心電図検査 運転業務などの危険業務がある業種では、上記の11項目の他に業務上検査する必要がある項目を指定する場合があります。 雇入れ時健康診断では、検査項目の省略は認められていないため、漏れなく実施できるよう必要な検査項目を従業員に伝えておきましょう。 定期健康診断との違いは? 定期健康診断と雇入れ時健康診断の大まかな違いは2つです。 ①検査項目は省略できない 雇入れ時健康診断は検査項目を省略できないため、11項目全て実施する必要があります。 一方で定期健康診断については、労働安全衛生規則第22条第2項によって、医師が必要でないと認める場合には特定の項目を省略できるとされています。具体的には、身長や腹囲、胸部X線検査、喀痰検査、貧血検査、肝機能検査、血糖検査、心電図検査です。 なお、これらの検査項目の省略は、個々の従業員の健康状態の経時的な変化や自覚症状・他覚症状などを勘案して判断する必要があります。 ②労基署への結果報告書の提出は必要ない 定期健康診断については、常時使用する労働者が50人以上の事業所は労基署へ健康診断の結果を報告する必要がありますが、雇入れ時の健康診断については、労基署への結果報告の義務はありません。 注意すべきポイント2つ 雇入れ時健康診断を実施する目的がよく分からないという方もいらっしゃるかもしれません。法律で定められているからと何となく実施することは、会社にとって思わぬリスクが潜んでいます。実施する上で、注意すべきポイント2つを確認しておきましょう。 実施する目的を確認!不当な扱いに利用しない 雇入れ時健康診断の目的は、安全や健康について配慮して適正配置をするためです。安全や健康について配慮すべきことはあるか?通常の勤務をさせて問題ないかを確認します。例えば、血圧や血糖が高めで長時間労働をさせると危ないということが分かった場合、長時間労働をさせないようにするなどの配慮が必要になります。 ただし、注意すべきことがあります。配慮の必要性は確認しますが、雇入れ時健康診断の結果をもとに内定を取り消すことはできません。業務に関係のない疾患を理由に内定を取り消すことは、就職差別と判断されてもおかしくありません。不当な扱いをしないように注意しましょう。 リスクが潜んでいる?実施時期に注意しましょう 実施時期は、「雇入れる直前と直後に実施する必要がある」とされています。 雇入れの直前については、雇入れ前の3カ月以内に実施した健康診断の結果を持っている従業員であれば、雇入れ時健康診断に相当する項目については省略することができます。つまり、入社前3カ月以内に受けた健康診断であれば、雇入れ時健康診断に代用できるということです。 一方で、雇入れの直後については、明確な期限は定められていません。入社後1カ月までには実施したほうが良いという考えがありますが、法律などで定義されていないため現状正解は無いと言えます。 雇入れ時健康診断の目的は安全や健康に配慮した入社後の適正配置であるため、配置後に問題が発覚するというよりも、配属前に把握してリスクを回避することが望ましいです。 「雇入れ時健康診断」でよくある質問3つ ここまでで雇入れ時健康診断の基本と注意するべきポイントを押さえました。次に弊社でよくいただくご質問と回答をご紹介します。「実際にこんな状況になったら…」と想像しながら読んでみてください。 前職の定期健診の結果を雇入れ時健診に代用できる? Q.転職してきた従業員が前職の定期健康診断の結果を出してきました。それを雇入れ時健康診断に代用しても良いでしょうか? A.雇入れ前3カ月以内のものであれば、前職の定期健康診断で代用が可能です。 ただし、定期健康診断は省略が可能な項目がありますが、雇入れ時健康診断はどの項目も省略できません。そのため、不足する項目がある場合には、追加で受診し、結果を提出してもらう必要があります。 「個人情報だから健診結果を提出したくない」と言われたら? Q.「個人情報である雇入れ時健康診断の結果を会社に提出したくない」という新入社員がいます。どうしたら良いでしょうか? A.まずは、会社として従業員の適正配置に使用することや健康管理のために使用するといった目的を従業員に丁寧に説明しましょう。そのうえで、「要配慮個人情報」として扱い、限られた人しか知ることはなく、健康診断の結果で不当な取り扱いをすることもないという旨を伝えて提出を促しましょう。従業員が安心して提出できるような言葉をかけてあげることが大切です。 4月入社の雇入れ時健診を6月の定期健診とまとめられる? Q.定期健康診断が6月にあるのですが、4月に入社する社員の雇入れ時健康診断はその定期健康診断と一緒にしても良いですか? A.雇入れ時健康診断の実施期限は明確に定義されていません。 雇入れ時健診は本人の健康状態を確認し、安全や健康に配慮した適正配置をするために実施するものです。リスクを回避するという点からいくと、可能な範囲で早めに実施した方が良いと考えられます。特に運転や高所作業などの危険が伴う職種においては、早めに受診しておくと安心でしょう。また、4月に新入社員や中途社員が一定数入社する場合は、4月~5月の早めの段階で健診を実施している企業も多くありますので、定期健診の時期が離れすぎるようであれば別々に実施してしまう方が安心かもしれません。 なお、今回の記事では触れていませんが、健康診断後に実施すべき会社の対応については下記の記事で解説しています。 健康診断を受けっぱなしにしていませんか?企業と産業医に求められる対応 まとめ 今回は雇入れ時健康診断の概要や注意するポイント、よくある質問について解説しました。その中でも特に今回お伝えしたかったのは、雇入れ時健康診断を実施する目的です。法令順守はもちろん大切ですが、それだけにとどまらず目的意識を持って実施することで初めて雇入れ時健康診断を実施する意義が出てきます。従業員が健康で活躍し続けられるために大切な最初の健康診断ですので、適切に実施していきましょう。 健康診断管理に関する課題はエリクシアで解決! 健康診断受けたままになっていませんか?衛生管理に関わるリスクマネジメントの基本である「健康管理」。受診と結果回収だけすればOKというものではありません。当社産業医サービスはリスク管理をスムーズに確実に行えるよう支援しています。>詳しくはこちらへ