WHOも推奨!効果的なラインケア研修を企画するための3つのチェックポイント 2024/11/12 2024/11/12 産業保健コラム [シリーズ①]管理職が喜ぶラインケア研修の実施方法 職場のメンタルヘルス対策で特に効果的だと示された「ラインケア研修」 職場のメンタルヘルス対策の優先施策として「ラインケア研修」に力を入れる企業が増えてきています。 本記事では、ラインケア研修はなぜ他のメンタルヘルス系研修より重視されているのか、また効果的なラインケア研修を実施するために、企画段階で押さえておきたいポイントについて解説します。 この記事でわかること(目次)職場のメンタルヘルス対策で特に効果的だと示された「ラインケア研修」 WHOが職場のメンタルヘルス対策として強く推奨した「ラインケア研修」 職場のメンタルヘルス対策ガイドラインの中身とは 効果の科学的根拠が高い「管理監督者トレーニング」 管理職向けラインケア研修が重要な理由 厚生労働省が示す「ラインによるケア」 職場における心の健康づくり~労働者のココロの健康の保持増進のための指針~ 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳 管理職に求められるラインケア必須スキル 効果的なラインケア研修を企画するポイント 無料のラインケア研修のメリット・デメリット ラインケア研修依頼時に押さえたい3つのチェックポイント まとめ すべて表示 WHOが職場のメンタルヘルス対策として強く推奨した「ラインケア研修」 近年は、先行きが不透明な時代や働く環境の変化などにより、多くの労働者がストレスを抱えやすくなっています。企業にとってもメンタルヘルスに関する問題やその対策はますます重要なテーマとなっています。そんな中、2022年に世界保健機関(WHO)が科学的根拠に基づく「職場のメンタルヘルス対策ガイドライン」を公表しました。 ガイドラインの公表前まで、WHOは職場のメンタルヘルスに関連する体系的な規則を明確に提示してこなかったため、今回のガイドラインの発表は、世界的に注目されました。 職場のメンタルヘルス対策ガイドラインの中身とは WHOの「職場のメンタルヘルスガイドライン」では、エビデンスなどさまざまな要素を検討した上で、【推奨できる】と判定されたメンタルヘルス対策が紹介されています。 検討されたさまざまな要素は、次の通りです。 ・エビデンスの確実性 ⇒科学的根拠が十分にあるかどうか ・望ましい効果と望ましくない効果のバランス ⇒施策の導入によって起こる望ましい効果が望ましくない効果を上回るかどうか ・費用対効果 ⇒費用に対して得られる効果が十分あるかどうか ・実現可能性 ⇒現実的に実行しやすい施策であるかどうか ・社会文化的受容性 ⇒施策が国・社会・組織の理解や賛同を得て受け入れられるかどうか など 上記のような幅広い要素を検討した結果、メンタルヘルス対策として12の推奨事項が提示されました。12の推奨事項は、3つの対象者と、6種類の介入分類によって整理されています。 ※参照 産業医学ジャーナル Vol.46 No.1 2023 「WHO職場のメンタルヘルス対策ガイドラインの紹介」 表2 効果の科学的根拠が高い「管理監督者トレーニング」 12の推奨事項のうち、科学的根拠に基づき特に強く推奨するとされた施策は2つあり、 そのうちのひとつにメンタルヘルスに関する管理監督者向けのトレーニング(ラインケア研修)が挙げられました。 ・推奨4「メンタルヘルスに関する管理監督者トレーニング」 ・推奨5「ヘルスケア・人道支援、緊急事態への対応に従事する労働者に関する管理監督者トレーニング」 この推奨4「メンタルヘルスに関する管理監督者トレーニング」とは日本における「ラインケア研修」が該当します。 一方で、一般社員向けや全社員向けに行われる「セルフケア研修」や「メンタルヘルス研修」にあたる、推奨6「メンタルヘルスリテラシーと気づきに関する労働者トレーニング」については、条件付きの推奨にとどまりました。有益なトレーニングとして推奨はされているものの、推奨度合いで言えば、管理監督者向けのラインケア研修の方が強く推奨されるという結果となっています。 ラインケア研修の優先度が高いということが分かったところで、 企業が管理職向けにラインケアのトレーニングをする際には、どのような目的でどのような内容を踏まえることが求められるのでしょうか? 管理職向けラインケア研修が重要な理由 WHOは管理監督者トレーニング、すなわちラインケア研修の目的や内容を次のようにまとめています。 目的 ・メンタルヘルスの知識向上 ・メンタルヘルスに対する態度や行動の改善 ・部下が困った時に助けを求める行動をとれるよう関係性を築く 内容 ・職場の心理社会的リスクについての知識 ・メンタルヘルスやストレス要因の知識 ・メンタル不調者の早期発見と適切な対応 ・部下とのコミュニケーションと傾聴 上記で特筆すべきは、目的にある「部下との関係性の構築」や、内容にある「部下とのコミュニケーションと傾聴」です。 ラインケア研修が重要な理由は、管理職がメンタルヘルスの知識を深め、偏見のない態度で早期発見・早期対応ができるようになるから、だけではありません。 ラインケア研修によって、部下と信頼関係を構築するコミュニケーションスキルも獲得できる、ここがラインケア研修の重要度をより高めています。 ラインケア研修は、コミュニケーション研修の役割も含んでいるのです。 ラインケア研修について相談したい エリクシアのeラインケア研修(eラーニング)を見てみる 厚生労働省が示す「ラインによるケア」 WHOで強く推奨された「管理監督者トレーニング(ラインケア研修)」ですが、日本にはどのような方針があるのでしょうか?厚生労働省が作成したマニュアルや指針など、各種資料を確認しておきましょう。 職場における心の健康づくり~労働者のココロの健康の保持増進のための指針~ 厚生労働省は、職場のメンタルヘルスケアは4つのケアを継続的かつ計画的に行うことが重要としています。4つのケアとは「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」です。 ラインによるケアとしての取り組みには次の様な内容が含まれています。 1.管理監督者による部下への接し方 ・「いつもと違う」部下の把握と対応 ・部下からの相談への対応 ・メンタルヘルス不調の部下の職場復帰への支援 2.職場環境等の改善を通じたストレスの軽減 ・職場環境等へのアプローチポイントの理解 ・職場環境等の改善のステップの理解 ※参照)職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~ https://www.mhlw.go.jp/content/000560416.pdf 各取り組みを見ると、ラインによるケアは自然と身に付く知識やスキルではないものも多いことが分かります。 教育制度がないまま、管理職個人個人の経験・判断に任せたラインによるケアを行っていると、不調者対応が後手に回ったり、労務トラブルが発生したりというリスクがあります。 ラインケア研修という形で、管理職の知識やスキルを高めることが重要です。 ※各ケアについて詳しくは「徹底解説!職場のメンタルヘルス対策4つのケア~具体例も手順もわかるシリーズ」をご覧ください。 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳 厚生労働省が監修する「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」(リンク)では、部下を持つ管理職に向けて、ラインケアの知識を積極的に発信しています。 「ラインケアの知識を身に付けたい」「部下へのケアを学びたい」「自分自身のケアをしたい」など、目的に合わせて情報を得ることができます。 研修ツールも豊富で、こころの耳を活用すれば、ラインケア研修の基本的情報が得られるでしょう。 研修ツールの例 ・動画・eラーニング ⇒15分バージョン、5分バージョンなど種類が豊富。手軽に誰でも学ぶことができる。 ・研修マニュアル ⇒実施マニュアル、スライドの例、配布用資料、実習プリントなどが、WordやPDFで用意されており、ダウンロードして活用できる。 管理職に求められるラインケア必須スキル 厚生労働省が示すラインによるケアでは、以下の3つのスキルを管理職に求めています。 ・早期発見 ・早期対応 ・傾聴・共感 これは、WHOが職場のメンタルヘルス対策ガイドラインで推奨した、管理監督者向けトレーニングの目的・内容と合致しています。 日本においては、ラインケア研修という形で管理職のスキルを高めることが、職場のメンタルヘルス対策として極めて重要な施策であると言えるでしょう。 効果的なラインケア研修を企画するポイント ラインケア研修がメンタルヘルス対策として優先されるべき施策だと理解したところで、次はラインケア研修をいざ企画するとなった時のポイントについて解説します。 無料のラインケア研修のメリット・デメリット ラインケア研修に関しては、先に紹介したように、厚労省が無料で提供している資料が豊富にあります。 その他、無料で配られているラインケア研修の動画や資料も数多く見られます。 無料ツールや教材を使用してのラインケア研修には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。 以下にまとめてみました。 メリット ・手軽に実施 細かい準備の必要なく、手軽にラインケア研修を企画・実施できる。 ・社内で完結 資料を基に、人事担当者が講師役となり実施することも可能。 ・必須知識の習得 法令に沿った基本的知識を押さえることができる。 デメリット ・リアリティ不足 使われている例題や事例が古かったり、自社の現場で起こり得ないケースを扱っていたりする可能性がある。 ・実用度の低さ 現場が求めている知識やスキルが含まれていない可能性がある。 ・ベテラン管理職のニーズとの不一致 ウェブで調べればすぐ出てくるような知識・スキルで、ベテラン管理職には物足りない可能性がある。 ラインケア研修依頼時に押さえたい3つのチェックポイント では、外部の機関にラインケア研修を依頼する場合、まずどのようなポイントを押さえれば、自社にとってより効果的なラインケア研修を企画できるでしょうか。 ラインケア研修を依頼する段階で大事なチェックポイントを確認しておきましょう。 □依頼先の信頼性 メンタルヘルスに関する高度な知識、豊富な事例を有しているかによって、研修内容の充実度には差が生まれます。そのため、日頃から企業のメンタルヘルス問題の解決に従事している機関・組織に依頼するのが望ましいでしょう。衛生管理の体制整備支援も行っている機関だと、より信頼性が高いです。 □継続的な学習計画 WHOがガイドラインで示したラインケア研修の目的は、「メンタルヘルスに対する態度や行動の改善」や「部下が困った時に助けを求められるよう関係性を築く」です。 1回の研修で習得しきるのは難しいスキルもあるため、継続的な学びが必要です。 単発で終わらず、2回目、3回目とシリーズ展開のあるラインケア研修かどうかも重要なポイントです。 □アフターフォローの有無 例えば、受講後アンケートがある、講師から人事担当者にフィードバックがあるなど、研修をやりっぱなしで終わらせず、振り返りの機会があるかどうかもチェックしておくとよいです。 まとめ 今回の記事では、ラインケア研修がメンタルヘルス研修の中で優先度が高い理由と、より効果的なラインケア研修を企画するためのポイントについて解説しました。 効果の科学的根拠が高いラインケア研修は、今や職場のメンタルヘルス対策における必須施策です。研修を一から企画する作業は大変ですが、解説したチェックポイントをヒントに、学習効果の高いラインケア研修を実施し、企業全体のメンタルヘルス対策を底上げしていきましょう。 ラインケア研修について相談したい エリクシアのeラインケア研修(eラーニング)を見てみる
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