再雇用・継続雇用ー高年齢労働者が増える前にやっておきたいことー

高齢者雇用ー再雇用、継続雇用

高齢者雇用の前に安全衛生管理体制を見直し

団塊世代が75歳以上の後期高齢者になることも含んだ「2025年問題」が迫ってきています。国民の5人に1人は後期高齢者になると言われており、結果として労働力人口が減少し、人材不足が慢性化する可能性があります。※

高齢者を雇用すれば、人材不足への解消に効果があり、その他にも「豊かなノウハウ、従業員のスキル向上、人材育成につながる」などのメリットが得られます。一方で、「加齢に伴う身体機能の低下」などのデメリットもあります。高齢者の1番の課題である「体力・体調面での不安」をカバーするためには高齢者雇用に備えて安全衛生管理体制を見直す必要があります。

高齢者が安心して働ける環境を作るために、本記事では、高齢者雇用の安全衛生管理ですべきことを詳しく解説していきます。「高齢者雇用をする際に何に気を付ければいいの?」と悩んでいる方はぜひ最後までお読みください。

※参照:日本財団『労働力不足、医療人材不足、社会保障費の増大—間近に迫る「2025年問題」とは?』

衛生管理体制の構築に関する課題はエリクシアで解決
この記事でわかること(目次)
  • 高齢者雇用の前に安全衛生管理体制を見直し
  • 再雇用・継続雇用とは?
  • 高齢者を雇う際の注意点―なぜ注意が必要なのか
  • 事業者が行う5つのこと
  • まとめ
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    再雇用・継続雇用とは?

    高齢者雇用の良いところと気を付けるべきポイント

    高年齢者を雇用することで企業にとって良いことを最大限に生かしたいものの、気を付けなければならないポイントもあります。以下のとおりです。

    ●企業にとって良いところ

    ・従業員の職場定着や職場全体の活性化
    ・高齢者人材の豊かなノウハウを生かすことで、若手従業員のスキル向上・人材育成につながる
    ・高齢者に配慮した職場を目指すことが働きやすい職場の実現へ
    ・国から助成金などの支援を受けられる
    ・人手不足の解消

    ●気を付けるべきポイント

    ・体力、体調面での不安があること
    ・デジタル活用支援が必要なこともある
    ・組織や部署のマネジメント機能低下につながる可能性もある

    継続雇用制度とは?

    高齢者のより充実した雇用環境の創出をめざすため、2021年4月より改正高年齢者雇用安定法が施行されました。改正内容は、これまでに定められている65歳までの雇用確保義務に加えて、「70歳までの就業機会を確保する措置を講じること」が努力義務として追加されています。

    継続雇用制度は、定年後も高齢者の希望に応じて雇用を延長するよう義務付ける制度で、高年齢者雇用安定法に則っています。厚労省のサイトによると、以下のような雇用制度を指します。

    雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する、「再雇用制度」などの制度をいいます。この制度の対象者は、以前は労使協定で定めた基準によって限定することが認められていましたが、高年齢者雇用安定法の改正により、平成25年度以降、希望者全員を対象とすることが必要となっています。

    参考資料:厚生労働省「高年齢者の雇用」

    改正高年齢者雇用安定法によって70歳までの就業機会の確保についても努力義務となり、以下のいずれかの措置を講ずるとしています。

    ①70歳までの定年年齢を引上げ
    ②70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入(他の事業主によるものも含む)
    ③定年制の廃止
    ④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
    ⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
     a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
     b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

    継続雇用制度には「勤務延長制度」「再雇用制度」の2種類があります。

    ●勤務延長制度

    定年を迎えても退職をせず雇用契約を継続する制度です。

    ●再雇用制度

    定年を迎えたら一旦退職として、退職後新たに雇用契約を結ぶ制度です。再雇用制度は、新たに雇用契約を結ぶため、定年前の労働契約に縛られないのが特徴です。

    高齢者を雇う際の注意点―なぜ注意が必要なのか

    では、なぜ高齢者を雇う際に注意が必要なのでしょうか。その理由について解説します。

    加齢に伴う身体機能の変化

    高齢者は加齢によって身体的・精神的機能が低下するため、労災の発生リスクが高くなります。加齢に伴う身体機能の変化として視力聴力平衡感覚反応時間心理的問題についてそれぞれ見ていきましょう。

    (1)視力
    高齢者の視覚的特徴は、以下のとおりです。
    ・近くにピントが合わなくなる
    ・細かいものが見えにくくなる
    ・明るすぎるとまぶしさを感じる
    ・明るさや暗さへの慣れが遅くなる
    ・画像がぼやけて見えづらくなる 

    (2)聴力
    聴力は、45歳頃から低下が目立ち始め、高い音の聴力は70歳以降急激に低下することや雑音に埋もれた音の聞き分けが難しくなります。

    (3)平衡感覚

    平衡器官(耳)、視力、筋力などの機能低下に伴って、平衡感覚も低下します。平衡感覚が低下すると、転倒転落リスクが高くなります。

    (4)反応時間

    「ランプが点灯したらできるだけ早くスイッチを押す」というような反応時間は加齢によって低下します。とっさに複数の選択肢から何かを選ぶ、というようなことが苦手と言えます。

    (5)心理的問題

    両親・配偶者等の看護や介護、死別、報酬の減少や権限の喪失によるモチベーションの低下などによって心理的問題が発生する可能性もあります。

    高齢者の労災の現状

    身体的・精神的機能の低下によって高齢者の労災発生率は高く、休業も長引きます。令和4年の厚生労働省の労働災害発生状況報告によると、60歳以上の男女別の労働災害発生率を30歳代の人と比較した結果、男性は約2倍女性は4倍となっています。また、休業見込み期間は高年齢になるほど長期間となっています。

    参考資料:厚生労働省「令和4年 高年齢労働者の労働災害発生状況」

    このように、加齢に伴って様々な変化や労災発生のリスクがあるため、会社は高齢者の特性を考慮した健康管理と安全管理を行う必要があります。

    事業者が行う5つのこと

    前述のとおり高齢者の健康管理と安全管理は「改正高年齢者雇用安定法」などの法律によって義務付けられています。その義務を果たすため、行うべきことは「安全衛生管理体制の確立」「職場環境の改善」「高年齢労働者の健康や体力状況の把握」「高年齢労働者の体力の状況に応じた対応」「安全衛生教育」の5つがあります。では順にみていきましょう。

    1.安全衛生管理体制の確立

    1つ目は、安全衛生管理体制の確立です。

    安全衛生管理体制の確立では大きく分けて3つのステップで行います。

    STEP1 方針の表明と体制整備

    経営者が高齢者の労災防止に取り組む方針を発表し、担当者を指定します。

    STEP2 現状把握

    担当者はチェックリストを使って職場の課題を洗い出します。厚労省が提示している職場改善ツール「エイジアクション100」のチェックリストがお勧めです。

    ※参考資料:厚生労働省「エイジアクション100」

    STEP3 リスクアセスメント

    高齢者の身体機能低下による労災について、衛生委員会などで過去の災害事例やヒヤリハット事例から対策の優先順位と具体的な対策を検討します。

    2. 職場環境の改善

    2つ目は職場環境の改善です。

    高齢者が安全に働き続けられるよう、施設・設備・装置等の改善を検討します。具体的には「職場の照度を確保する※」「階段には手すりをつけ、可能な限りスロープを作る」「警報音等は聞き取りやすい中低音域の音にする」などです。

    ※職場の照度は、「一般的な事務作業」については300ルクス以上、「付随的な事務作業※2」については150ルクス以上の照度を確保するという基準を満たしたうえで、日本産業企画JJIS Z9110 に規定する各種作業における推奨照度等を参照し、健康障害を防止するための照度基準を事業場ごとに検討し、定めます。

    ※2付随的な事務作業:資料の袋詰め等、事務作業のうち、文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のないもの

    3. 健康や体力の状況把握

    3つ目は高年齢労働者の健康や体力の状況把握です。

    実施義務がある定期健康診断に加え、健康に関するアンケートを実施するなど事業者と労働者双方が体力状況を客観的に把握し、体力に応じた配慮ができるよう定期的にチェックをしましょう。健診結果やアンケートの結果などをもとに必要があれば産業医による面談を実施しできる体制を整備します。

    4. 個人の健康状況や体力にあった対応

    4つ目は高齢者の健康状況や体力にあった対応です。

    産業医による就業判定の結果をもとに、必要な労働者には時間外勤務の短縮や作業転換などの就業上の措置を実施します。また業務内容についても心身の状況に合わせて業務を検討してきます。さらに心身の健康を保持増進するために、身体機能の維持向上の支援やストレスチェック、メンタルヘルス対策などを行いましょう。

    5. 安全衛生教育

    5つ目は安全衛生教育です。

    安全衛生教育には、本人に対する教育管理監督者に対する教育の2種類があります。

    高年齢労働者本人に対する教育は、身体機能の低下によるリスクを自覚し、体力維持生活習慣の改善の必要性を理解してもらうことが重要です。具体的には危険予知トレーニング、転倒や腰痛予防に関する教育などがあります。教育を実施する際のポイントとしては、写真や図、映像など文字以外の情報も活用して実施することが大切です。

    また管理監督者に対する教育は、高齢者の特徴加齢に伴う労災リスク増大への対策などがあります。管理監督者だけでなく、一緒に働く従業員に対しても教育を行うことが大切です。

    ※衛生管理の基本については以下の記事で解説しています。
    50人の壁おさえておきたい8つの衛生管理業務
    50人未満の小規模事業場でも知っておきたい、安全衛生管理とは

    まとめ

    今回は高齢者を雇う際の注意点と会社がすべき対応についてお話しました。高齢者雇用を実施するときは、高齢者の特性を理解したうえで、安心して働ける職場環境づくりが必要です。

    具体的には「安全衛生管理体制の確立」「職場環境の改善」「健康や体力の状況把握」「健康や体力の状況に応じた対応」「安全衛生教育」の5つです。

    「人生100年時代」と言われる現代において、高齢者雇用は人材不足を解消するだけでなく、企業の活性化などにもつながります。高齢者自身の「働きたいという思い」を叶えるためにも、会社として行うべき対応をしっかりと把握し実践しながら、高齢者雇用に積極的に取り組んでいきましょう。

    衛生管理体制の構築に関する課題はエリクシアで解決できます。

    事業場の従業員が50人を超えると、産業医や衛生管理者の選任、ストレスチェックの実施報告など様々な義務が発生。
    義務化への対応だけでなく、人事担当者が今後ラクに安心して運用していける衛生管理体制の構築を支援します。

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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