メンタルヘルスに強い産業医とはー精神科医じゃないとメンタルヘルスは対応できない? 2022/07/22 2024/05/27 産業保健コラム メンタルヘルスに強い産業医は、精神科医だけとは限らない メンタルヘルスとは、直訳すると「心の健康」です。心の健康状態は目に見えないため、周りの人はもちろんのこと、自分でさえ気づかないことも多いです。 近年、職場におけるメンタルヘルスの問題は複雑化しており、2021年に厚生労働省が公表した「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」では、職場や仕事で強い不安やストレスを感じたことのある労働者の割合は82.2%という結果が出ています。また、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.4%です。事業規模別にみると、50人以上の事業所では9割を超える事業所がメンタルヘルス対策に取り組んでいると回答しており、引き続き会社におけるメンタルヘルス対策が重要視されていることがわかります。 さらに、労働者の心の健康は、組織全体の活力や生産性に影響を及ぼすことが様々な研究からも明らかになり、メンタルヘルスへの取り組みが浸透するきっかけになりました。 メンタルヘルスに関する取り組みとしては、メンタルヘルス研修やラインケア研修、相談窓口の設置など様々あります。そのうちの一つに、産業保健スタッフの活用もあります。産業保健スタッフは会社にいる医療の専門家です。産業医のイメージが強いかもしれません。産業医にメンタルヘルスの問題を頼むなら、精神科医の産業医が良いと思われる方が多いかと思います。実際、弊社に来る産業医の選任に関するお問い合わせでも、精神科医を希望される会社は多い印象です。しかし、実は、メンタルヘルスに強い産業医は精神科医だけとは限りません。 本記事では、精神科医でなくてもメンタルヘルスに強い産業医がいる理由について解説していきます。ぜひ産業医を選ぶ際の参考にしてみてください。 衛生管理者、人事担当の方 必見!「初めて産業医を選任をする」「産業医の役割や業務について知りたい」「自社に合った産業医の選び方が知りたい」そんな時に役立つ、【チェックリスト付き】自社に合った産業医の選び方資料をご用意しました! 資料をダウンロードする この記事でわかること(目次)メンタルヘルスに強い産業医は、精神科医だけとは限らない産業医と主治医の違いは?主治医の役割、産業医の役割もし主治医と産業医の意見が異なったら?精神科医じゃなくともメンタルヘルスに強い産業医が存在する2つの理由理由1:職場におけるメンタルヘルス対応は、医療機関における精神疾患の対応とは異なるから理由2:労働関係法に関する知識や経営的視点も持ち合わせる必要があるからまとめメンタルヘルスに強いエリクシア産業医すべて表示 産業医と主治医の違いは? メンタルヘルス対応に強い産業医が精神科医だけとは限らない理由を解説するにあたって、まずは「医療機関の主治医」と「産業医」の違いについて知っておくとよいです。 まずは、下記質問の回答について考えてみてください。 「産業医から薬の処方をしてもらえますか?」 「診断書を書いてもらえますか?」 弊社によく来る質問ですが、結論を言ってしまうと、基本的に産業医から薬の処方をしたり診断書を書いたりはできません。なぜ、産業医は薬の処方や診断書を発行することができないのか、主治医と産業医の役割から確認していきましょう。 主治医の役割、産業医の役割 医療機関の主治医の役割はけがや病気の診断・治療・処方を行うことです。患者が日常生活を問題なく送れるようにするための医療介入を行います。一方で、産業医の役割は、会社において労働者が健康で快適に仕事ができるように専門的立場から指導・助言を行うことです。会社に診療所を併設していない限り、医療機関の医師のように診断・治療・処方は行いません。産業医は、労働契約上で定められている業務内容や就業時間の労働が安全に行えるかどうかを基準として、会社と従業員の中立した立場から指導・助言をする「コンサルタント」のようなイメージです。 <産業医と病院の主治医との違い> 産業医主治医対象労働者患者活動場所事業場医療機関、健診機関など根拠法律労働安全衛生規則第14条医師法職務内容労働者の健康障害を予防し、心身の健康保持増進を目指した活動けがや病気の検査・治療医師行為(診断・治療)行わない行う(保険診療、自由診療) もし主治医と産業医の意見が異なったら? もし、主治医と産業医の意見が異なった場合、最終判断を下すのは「会社」です。主治医と産業医の意見をもとに会社が総合的に判断します。また、主治医の意見を聞くために産業医から「診療情報提供書」という、意見を聞く手紙を出して双方のすり合わせを行う場合もあります。 主治医と産業医の役割や違いについては、以前の記事でも解説しています。気になる方は下記リンクからご覧ください。 5つの視点で考える産業医の役割と主治医の違い 精神科医じゃなくともメンタルヘルスに強い産業医が存在する2つの理由 ここまで、主治医と産業医の違いについて確認してきました。主治医と産業医は、同じ「医師」でも、活動するフィールドや役割が異なります。もちろん心の専門家である精神科医がメンタルヘルス対応に強いことは事実です。しかし、産業医は治療や処方をするわけではないため、精神科医以外にもメンタルヘルス対応に強い産業医はいます。なぜ、精神科医ではなくてもメンタルヘルスに強い産業医が存在するのかというと、大きく下記2つの理由があります。 理由1:職場におけるメンタルヘルス対応は、医療機関における精神疾患の対応とは異なるから 主治医と産業医の違いでも述べた通り、主治医は、病院やクリニックなど医療機関で診断・治療・処方メインに活動しています。一方で産業医は、職場でのけがや心身の病気の予防、再発防止、就業可否の確認などを行います。治療を目的とするならば、心の専門家である精神科医の出番です。しかし、産業医は治療が目的ではありませんので、精神科医でなければメンタルヘルス対応ができないというわけではありません。大切なのは「メンタルヘルス問題を早期発見し未然に防止すること」と「心の病気を抱えながらも上手に仕事と両立できるようにすること」です。対象は患者ではなく、労働者と会社であることをしっかりと認識し、「働く場」におけるメンタルヘルス対応について指導・助言ができる産業医が本当にメンタルヘルス対応に強い産業医と言えます。 理由2:労働関係法に関する知識や経営的視点も持ち合わせる必要があるから 産業医は医療の知識さえあればいいわけではありません。会社と労働者の考えが異なり明確な答えがないグレーなケースや労働関係法が絡んだ複雑なケースでは、医療知識だけでは解決が難しいことがあります。そのため、産業医は労働関係法や会社の特性を踏まえた対応方法を会社に提案することや、本人と職場の状況を加味し疾病と仕事の両立方法を提案するなど医療知識以外が必要になるシーンは多くあります。 まとめ 医療機関の主治医と産業医は役割が全く異なります。主治医は診療を行いますが、産業医は診療を目的としているわけではありません。産業医は会社と労働者の中立的な立場から「安全に健康に働けるか」という視点で指導や助言を行います。また、的確な助言をするためにはメンタルヘルスに関する医療的知識だけでなく、法律や経営に関する知識も必要となるため、多角的な視点から指導・助言できる産業医が、本当にメンタルヘルス対応に強い産業医と言えます。 衛生管理者、人事担当の方 必見!「初めて産業医を選任をする」「産業医の役割や業務について知りたい」「自社に合った産業医の選び方が知りたい」そんな時に役立つ、【チェックリスト付き】自社に合った産業医の選び方資料をご用意しました! 資料をダウンロードする メンタルヘルスに強いエリクシア産業医 この頃職場のメンタルヘルスは複雑化しており、産業医の行う業務もビジネスや法律に絡む場面が多くみられるようになりました。産業医は医療知識だけでなく、ビジネスや法律への知識が必要です。さらに、会社の担当者や労働者の相談に乗ったり面談を行ったりするにあたって、高いコミュニケーション能力やヒューマンスキルも求められます。エリクシアでは、質の高い産業医の育成に力を入れており、徹底した産業医教育を行っています。また、複雑なケースでも労働関係法や他社事例を踏まえた会社対応の道筋を提案できるようしています。産業医をお探しでしたら、ぜひエリクシアの産業医にお任せください。>詳しくはこちら