産業医とは?はじめての選任 探し方、相場、届出の基本

産業医とは?はじめての選任方法

はじめて産業医を選任する方必見!産業医選任の基本を解説

はじめての産業医選任に不安を抱えていませんか?はじめて産業医を選任するとき、産業医の存在が身近ではない場合がほとんどですので、産業医を選ぶにはどうすればいいのか、何からすればいいのかと迷うかもしれません。本記事では、産業医とはどのような存在なのかの解説から産業医の役割・仕事内容をはじめ、良い産業医の選び方選任後の届出方法等についてわかりやすく解説していきます。

ぜひ、産業医についての理解を深め、御社にぴったりの産業医を選任していきましょう。

初めての産業医導入に関する課題はエリクシアで解決!
この記事でわかること(目次)
  • はじめて産業医を選任する方必見!産業医選任の基本を解説
  • 産業医とは?役割と仕事
  • 産業医はどう探す?報酬相場はどのくらい?
  • 「いてくれてよかった」と思える産業医とは?産業医の選び方と届出
  • まとめ
  • 初めての産業医導入に関する課題はエリクシアで解決!
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    産業医とは?役割と仕事

    産業医の役割は、職場における健康管理のアドバイザー

    産業医とは、職場で従業員が安全に、快適に仕事をすることができるように、専門的な立場から指導、助言する医師です。50人以上の従業員がいる※1事業場※2産業医の選任が法律で義務付けられています。

    ※1「50人以上」とはパートやアルバイト、派遣社員なども含む。
    ※2 「事業場」とは、同じ場所で関連する組織的な作業をする場所の単位。同じ会社であっても、支店、支社、店舗ごとに1事業場となる。

    会社に産業医がいるメリットは主に3つあります。

    1.労働者の健康保持・増進を図り、労働と健康の両立に向けた取り組みができる
    2.従業員が安全かつ快適に仕事ができる環境整備について専門的視点から助言をもらえる
    3.衛生教育や健康指導を通じて職場全体の健康意識が向上する

    なお、医師であれば誰でも産業医になれるわけではなく、産業医の要件は、労働安全衛生規則第14条第2項に以下の通りに定められています。

    ①厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
    ②産業医の養成課程を設置している産業医科大学、その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて
    当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者

    ③労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
    ④大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者

    これらの条件を満たした医師がはじめて、産業医として活動することが可能になります。

    産業医が行う8つの仕事内容

    では実際に、産業医はどのような職務を行うのでしょうか?産業医の仕事は大きく分けて以下の8つの職務に分類できます。

    1.衛生委員会の出席

    衛生委員会とは、従業員が心身ともに健康で活き活きと仕事ができる環境を整えるために、経営層や人事・総務と現場の社員が議論をする委員会です。会社の課題を共有し具体的な解決策を話し合います。50人以上の従業員がいる事業所は月1回以上開催することが義務付けられています。産業医は衛生委員会に参加し、専門的な立場から議論に対する意見を述べ、議題を共有します。

    2.職場巡視

    職場巡視は、従業員が働く作業環境を見て回り、安全衛生上の問題点をチェックし、改善していくことを目的におこないます。50人以上の従業員がいる事業所では、産業医は原則月1回以上の実施が定められています(※平成29年の労働安全衛生規則の改正で2カ月に1回の実施も可能になったが条件があります)。産業医は、事業所を見て回り、作業環境の衛生面や防災面のチェック、現場の意見を聴取しフィードバックしていきます。

    3.衛生教育

    衛生教育は、従業員の心身の健康維持・増進のために実施します。産業医は衛生委員会や現場において、健康管理や衛生管理についての講和をします。例えば、季節で流行しやすい感染症や衛生管理に関係するホットな話題、法律の改定など、会社や従業員が知っておくべき話題について共有します。

    4.健康診断結果の確認

    健康診断実施後は従業員の健康保持のために必要な措置について、医師から意見を聞くことが義務付けられています。そのため会社は健康診断の結果を回収し、産業医の確認をもらう必要があります。産業医は健康診断結果を1人ずつ確認し、就業面・医療面それぞれの観点で判定を行います。会社は産業医の判定に基づいて、今すぐ治療を必要とする人に病院受診を促し、場合によっては就業制限や就業禁止といった対応が必要になることがあります。

    5.健康相談、健康指導

    健康相談や健康指導は従業員が適切な指導や助言を受けることで課題解決を図る目的でおこなわれます。産業医は面談を通じて従業員に対して心身の健康の維持と促進に向けたアドバイスや指導をします。例えばメタボリックシンドローム予防や糖尿病予防のための健康指導があります。

    6.長時間労働者に対する面談指導

    長時間労働者に対する面談指導は、長時間の労働により疲労が蓄積し健康障害発症のリスクが高まった労働者について、その健康の状況を把握本人への指導を行うとともに、その結果を踏まえ必要な措置を講ずることを目的としています。時間外労働が80時間を超えた労働者で希望がある場合の面談や、100時間を超えた労働者への面談を行います。

    7.ストレスチェックにおける高ストレス者への面談指導

    ストレスチェックとは、ストレスに関する質問票に従業員が回答し、それを集計・分析することで自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べるものです。従業員が50人以上いる事業所では毎年1回実施することが義務付けられています。産業医は、ストレスチェックの高ストレス者でかつ希望があった場合の面談指導を行います。また、従業員の同意の範囲で、面談で聴取した内容のうち、労働者の安全・健康確保のために会社へ伝える必要がある情報を会社側へ提供します。産業医からの意見によって会社は適切な措置を講ずることが可能になります。

    8.その他、面談指導

    産業医面談とは、従業員の心や体の健康に問題がないかを実際に話をして確認するためのものです。健康相談や高ストレス面談、過重労働面談以外にも、産業医による面談には以下のようなものがあります。

    ◆産業医面談の種類

    -休職者、メンタル不調者などへの状況把握面談
    -復職判定面談
    -復職後フォロー面談
    -新入社員面談
    -本人希望面談

    本人の希望があった場合に限らず、会社が必要と判断する人に対して面談し、状況の確認や助言を行います。

    産業医の仕事内容や相談できることについては下記の記事でも解説しています。

    産業医とは?産業医の役割と8つの仕事内容

    健康相談・メンタルヘルスだけじゃない!産業医が対応できる5つの相談ジャンル

    自社に合った産業医の選び方

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    産業医はどう探す?報酬相場はどのくらい?

    まず、産業医の選任方法は専属産業医と嘱託産業医の2つの方法があります。それぞれの違いや、探し方、選任後の対応について確認していきましょう。

    嘱託と専属はどう違う?産業医の種類は2つ!

    産業医の選任方法は2つあり、「嘱託」の産業医(嘱託産業医)と「専属」の産業医(専属産業医)があります。嘱託産業医と専属産業医の主な違いは勤務形態にあります。

    【嘱託産業医】

    ◆勤務形態
    非常勤のため常時事業場にはいない

    ◆訪問頻度
    嘱託産業医は月1回から数回、1時間~2時間程度で事業場へ訪問します。(契約内容によって変わることがあります)嘱託産業医は、産業医専門で活動している産業医もいれば、医療現場との掛け持ちで活動している場合もあります。たとえば、週3~4日は病院やクリニックなどで勤務して、残りの1~2日で産業医として活動するなどです。

    ◆兼務
    嘱託産業医は、他の事業場の産業医と兼任できます。


    【専属産業医】

    ◆勤務形態
    常勤、週3~5回事業場にいる

    ◆訪問頻度
    専属産業医は事業場に所属しています。週3~5回など常勤日数は契約により異なります。他の従業員と同様に事業場で勤務するため、より身近な視点で職場の問題点に気づける可能性が高くなります。従業員にとっては、産業医や産業保健スタッフを身近に感じやすくなり、相談のハードルが下がることが期待されます。

    ◆兼務
    専属産業医は一定の条件のもと、事業場の嘱託産業医を兼務できます。

    産業医の選任人数は安衛法で確認

    選任する産業医の人数や種類(嘱託/専属)は、事業場の労働者数や業種によって定められています。(安全衛生法第13条第1項)
    事業場の労働者数が50人以上であれば嘱託産業医の選任が必要です。事業場の労働者数が1000人以上または、有害業務を取り扱う業種でかつ労働者数が500人以上の場合は、専属産業医の選任が必要です。具体的な選任人数は、下の表で確認していきましょう。

    事業場の労働者数産業医の選任人数
    0~49人必要なし
    50~999人1名以上(嘱託可)
    1000~3000人産業医1名以上(専属)
    3001人以上産業医2名以上(専属)

    ※特殊業務に500人以上の従業員を従事させる事業所は専属産業医の選任が必要です。

    ※対象となる労働者数には、正社員だけでなく契約社員や、派遣、パート、アルバイトも含まれます。

    産業医の探し方

    産業医を探す方法としては以下のような方法があります。

    -産業医紹介会社からの紹介

    -地域の医師会に相談し紹介

    -健診実施機関に相談し紹介

    -近隣の医療機関に相談し産業医の資格を持つ医師がいれば紹介

    -社員の人脈からの紹介

    自力で探すよりも、紹介会社を通して契約をする場合のほうが、産業医を探す手間が省けることや、産業医の一定の質が保証されていること、会社の要望に適した産業医を紹介してくれるなどのメリットがあります。また、会社によっては、衛生管理体制の立ち上げや、ひな形提供、書類作成・提出のサポート、相談窓口などサポートサービスが充実しているというメリットもあります。

    産業医の相場

    産業医の相場は専属産業医と嘱託産業医で異なります。産業医の相場としては一般的に専属産業医の方が高くなります。専属産業医の年俸はおよそ1000~1500万円です(勤務日数によって変わります)。その年俸の一定割合を紹介料として紹介会社が受け取ります。紹介料の目安は30%程度と言われています。

    嘱託産業医の月額報酬は、労働者が50人の事業場で約6~10万円が相場です。労働者の人数や、立地、外国語対応の有無、精神科の専門医希望の有無などで金額が変動します。

    月額報酬の中には、産業医選任料と紹介会社のサポート料で構成されていることが多く、サポートには以下のような内容が含まれます。

    -衛生管理に関する資料や書類のひな形提供
    -産業医と企業間でのスケジュール調整と連絡代行
    -衛生委員会テーマ提供
    -産業医への情報共有、活動書類の管理

    各紹介会社でサポートの範囲や、料金は異なるため、事前にどのようなサポートが受けられるのか確認しておくとよいでしょう。

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    「いてくれてよかった」と思える産業医とは?産業医の選び方と届出

    では、産業医の選び方と、選任後の流れについて確認していきましょう。

    良い産業医の選び方 3つのポイント

    会社にとって「いてくれてよかった」と思える産業医、つまり良い産業医を選ぶ際のポイントとしては3つあります。

    ポイント1 会社の労働環境に適した、衛生管理を行う知識・経験を持っている

    産業医は、労働者の健康を守るために、健康管理・作業管理・作業環境管理といった3つの観点から業務を行います。工場であれば作業管理・作業環境管理はとても重要な要素です。一方で一般的なオフィス勤務やリモートワークでは、労働災害発生のリスクがそれほど高くないことから健康管理に重点が置かれることが多くあります。このように、工場ならば工場に適した衛生管理、オフィスならオフィスに適した衛生管理、リモートワーク時に配慮すべき衛生管理など、労働環境に応じた柔軟な視点を持ち、健康と労働の両立についてアドバイスできる産業医であることが重要です。

    ポイント2 レスポンス(受け答え)のよさ 

    産業医側、会社側それぞれが従業員の心身の状態についてしっかりと把握していくためには情報共有や相談が欠かせません。嘱託産業医の場合、他の事業場への訪問や医療現場と掛け持ちをしていることから、即時に返事(レスポンス)をすることが難しいこともあります。紹介会社を利用する場合には、連絡窓口があると安心です。具体的には、産業医チーム制など、担当産業医が対応できない場合の相談窓口を備え、保健師やサブ産業医が対応してくれるサービスがありますので、連絡手段については必ず事前に確認することをおすすめします。

    ポイント3 さまざまな問題に対して柔軟に対応ができる

    近年では従業員のメンタルヘルス問題が深刻になっており、メンタルヘルス問題に迅速に対応できる産業医が求められています。面談を行うだけでなく、その後の会社対応について医療や労働法の知識をもとに、「会社としてどう対応したらよいのか」をアドバイスできる産業医がいると安心です。また、女性が多い職場では女性に特有の病気やライフイベントに応じた相談に対応できる産業医を希望する従業員の方もいます。さらに、2020年からは新型コロナウイルス感染症の拡大を受けてコロナ対応について適切に助言・指導ができることも求められています。会社で抱える多種多様な課題に対して専門的な立場から柔軟に対応できる産業医を選任する必要があります

    以上のように、会社にとって「本当にいてくれてよかったと思える産業医」とは衛生管理に関する豊富な知識と経験を持ち合わせ、企業のスタイルやニーズに応じて柔軟に対応し、寄り添うことができる産業医です。

    産業医選任後の届出方法

    産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任したら、産業医選任報告書などの書類を遅滞なく労働基準監督署へ提出しなければなりません。産業医選任報告書に必要事項を記入後、選任する産業医の産業医証・医師免許証控えを同封のうえ、労働基準監督署へ郵送・窓口持参もしくは電子申請(ē-Gov)いずれかの方法で届出を行います。 届出様式は厚労省ホームページより入手することが可能です。

    厚労省ホームページへ

    まとめ

    産業医の仕事内容は労働者の健康障害の予防と健康保持、増進を目的として、多岐にわたります。コロナ対応や、リモートワークをはじめとする働き方の変化、改正高年齢者雇用安定法施行による高齢社員への対応、障がい者雇用、など企業における衛生管理体制も時代や社会情勢に合わせた対応が必要となってきます。

    産業医について基本事項をしっかりと理解し、自社のニーズに合った産業医を選任していきましょう。

    自社に合った産業医の選び方

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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