大前提!職場のメンタルヘルス対策4つのケアの役割と具体例 2023/04/20 2024/07/14 メンタルヘルス [シリーズ]徹底解説!職場のメンタルヘルス対策4つのケア~具体例も手順もわかる①~ メンタルヘルス対策「4つのケア」を効果的に連動させる方法とは 企業がメンタルヘルス対策を推進するにあたり、具体的施策として重要なのは「4つのケア」です。4つのケアとは、厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」で定められた「セルフケア」「ラインケア」「事業場内の産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」を意味します。 4つのケアは“誰”が行うメンタルヘルス対策なのか、実施主体によって分類されています。セルフケアであれば労働者個人、ラインケアであれば管理監督者など、それぞれの立場からメンタルヘルス対策に取り組んでいくことになります。では、具体的にどんな施策を取り入れれば良いのでしょうか。 せっかく4つのケアを実施するなら効果のある施策にしたいものです。しかし、よくありがちな例としては4つの施策をバラバラに実施し、それぞれが単独、単発で終わってしまい、効果が薄くなってしまうということです。また、施策を取り入れる順番がちぐはぐになり、4つのケアに準じた体制作りがうまく進まないというケースも多く見られます。そこで、このシリーズでは、4つのケアの取り組み事例を挙げながら、誰が、どんな方法や手順でメンタルヘルス対策に取り組むのが良いのか、具体的に解説します。 シリーズの中では4つのケアを効果的に連動させるための一例として、「認知行動変容アプローチ」に基づいたフレームワークも紹介します。4つのケアに準じた体制をしっかり整え、メンタル不調者への早期発見、早期対応、発生予防を実現していきましょう。 今回の記事では、4つのケアに取り組む前に大前提として、そもそも4つのケアとはなにか、役割と事例について解説していきます。一番の基礎になる話ですので内容をしっかり確認していきましょう! [シリーズ]徹底解説!職場のメンタルヘルス対策4つのケア~具体例も手順もわかる~1:大前提!職場のメンタルヘルス対策4つのケアの役割と具体例 ←今回はこちら2:成否の分かれ道?!メンタルヘルス4つのケアの理想的手順とは3:見えていますか?!4つのケアの繋がりと全体 この記事でわかること(目次)メンタルヘルス対策「4つのケア」を効果的に連動させる方法とは4つのケアの具体的内容を解説セルフケアラインケア事業内の産業保健スタッフ等によるケア事業場外資源によるケアまとめメンタルヘルス対応に関する課題はエリクシアで解決!すべて表示 4つのケアの具体的内容を解説 4つのケアは取り組む主体によって分かれていますが、どんな施策を取り入れるか、中心となって計画するのは事業者であり、メンタルヘルス対策の担当者です。担当者に豊富なアイデアがなければ、画一的なケアになったり、自社の実態に合わないケアを採用してしまったりなど、効果的な計画から外れてしまう場合があります。 そのため、まずは4つのケアそれぞれの基本の定義や、実際に行われている具体的な取り組み事例を見ながら、4つのケアの中身をイメージできるようにしておきましょう。 具体的な取り組み内容がイメージできるようになると、自社に足りていないケアや、重点的に行う必要のあるケアが、自然と浮き彫りになってくるでしょう。 セルフケア セルフケアは「働く人が自らのストレスに気付き、予防対処し、また事業者はそれを支援すること。」と厚労省のウェブサイトで説明されています。労働者のセルフケアを推進するために事業者がすべきことは、まず、教育研修や情報提供によって心の健康に関する理解の普及を図る事です。また、相談体制や相談窓口を整え、労働者が自発的に相談しやすい環境を用意し、その利用のハードルを下げる取り組みも重要です。 厚生労働省は、「メンタルヘルス指針」において、セルフケア推進のためには以下のような内容の教育研修、情報提供を行う必要があると定めています。 ●労働者に対する教育研修・情報提供の具体的内容①メンタルヘルスケアに関する事業場の方針②ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識③セルフケアの重要性及び心の健康問題に対する正しい態度④ストレスへの気づき方⑤ストレスの予防、軽減及びストレスへの対処の方法⑥自発的な相談の有用性⑦事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報 【参考】厚生労働省 独立行政法人労働者健康安全機構「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」 研修や情報を提供する際に確認しておきたいことがあります。労働者が求める、本当に役立つ情報やサービスを提供できるか、ということです。定期的なアンケート等で職場環境を把握し、現場に合った教育、情報提供を行い労働者とズレがないか確認していきましょう。なお、ここで言う労働者とは管理監督者も含む全ての労働者を意味します。 学ぶ機会や情報提供を通じて、労働者個人は自分のストレスに気づき、ストレスケアの適切な方法を身に付け、その方法を実行できるようになります。 以下、セルフケアを推進するための具体的取り組み事例です。 <セルフケアの取り組み事例>・産業医、保健師、カウンセラーなど、社内外の産業保健スタッフによる全従業員向けのメンタルヘルス研修を実施する・ストレスケアの基本知識を身に付けられるeラーニング研修を導入する・自分でできるリラクゼーションのワークショップを実施する・ストレスチェックを実施して、メンタル状態やストレスへの各個人の気づきを促進する・社内メンタルヘルスシステムや相談窓口の活用方法について社内報にて周知する・月1回社内チャットでメンタルヘルスケアに役立つ知識を流す 【参考】・厚生労働省「事業場におけるメンタルヘルス対策の取組事例集~いきいきと働きやすい職場づくりにむけて~」・「リスクマネジメントブックス 事例で学ぶメンタルヘルス対策」久保 太郎【企画】/久保 貴美/淵上 美恵【著】(第一法規出版) ここまでは、セルフケアについて解説してきました。 労働者が求める本当に役立つ情報やサービスの提供ができているかどうか意識することを、忘れないようにしましょう。具体的な手順についての詳細は、次回の記事で解説します。 では、セルフケアに続いてラインケアについて解説します! エリクシアでもセルフケア研修を実施しています!自分自身でストレスケア!突然のメンタルダウンを防止する「セルフケア研修」「不安」と「変化」を乗り越えられる「eメンタルヘルス研修」 ラインケア ラインケアは管理監督者が労働者に対して行うケアです。日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うことが求められ、事業者はそれを支援します。なお、この場合の「ライン」とは、日常的に労働者と接する、職場の管理監督者(上司その他労働者を指揮命令する者)を意味します。 ラインケアを推進するために企業がすべきことは、管理職に求めたい健康管理の知識とスキルを提供していくことです。管理職は、健康管理の知識とスキルを得ることで、部下の健康状態やストレス要因を把握し、改善を図ることができるようになります。また、部下から積極的に相談を受け、適切に対処できるようになることも求められます。 厚生労働省は、「メンタルヘルス指針」において、ラインケア推進には、以下のような内容の教育研修、情報提供を行う必要があると定めています。 ●管理職に対する教育研修・情報提供の具体的内容①メンタルヘルスケアに関する事業場の方針②職場でメンタルヘルスケアを行う意義③ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識④管理監督者の役割及び心の健康問題に対する正しい態度⑤職場環境等の評価及び改善の方法⑥労働者からの相談対応(話の聴き方、情報提供及び助言の方法等)⑦心の健康問題により休業した者の職場復帰への支援の方法⑧事業場内産業保健スタッフ等との連携及びこれを通じた事業場外資源との連携の方法⑨セルフケアの方法⑩事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報⑪健康情報を含む労働者の個人情報の保護等 上記項目を学ぶことで、管理職は職場環境の把握と改善、部下からの相談対応、休職者の職場復帰における支援などを実行できるようになります。中でも特に欠かせないのは、早期発見・早期対応の知識です。「いつもと違う」部下の様子にいち早く気づき、メンタル状態に合わせた適切な対応を迅速に行えるかどうかが、ラインケアの要になります。そのために、管理職には日頃から部下の様子に関心を持つこと、部下が相談しやすい環境や雰囲気を心掛けてもらう必要があります。 1点会社として注意すべきことは、管理職の中には、「部下の業務管理や評価さえしていれば、部下の精神サポートは自分の仕事ではない」、と考えている管理職がいるかもしれないということです。メンタルヘルスに関してそのような偏見を持っていると、ラインケアが成り立たちません。ですので、部下からの相談に積極的に耳を傾けられるよう、部下の精神サポートも管理職の仕事であることを自覚させることや管理職のコミュニケーション能力を上げる取り組みも、ラインケアにおいては大切です。 なお、業務を一時的なプロジェクト体制で実施する等、通常のラインケアが困難な業務形態になる場合は、そのプロジェクト体制における指揮系統の上位者、上長によってケアが行われる必要があります。新しいプロジェクトを立ち上げる際などは調整するよう注意しましょう。 以下、ラインケアを推進するための具体的取り組み事例です。 <ラインケアの取り組み事例>・労働者の意識調査結果に基づき、課題に合った内容のラインケア研修を企画・実施する・部下の相談を受けるための傾聴法講習会を実施する・人間関係を把握しコミュニケーションを円滑にするための研修を実施する・不調者発生時の基本対応フローチャートを作成し、管理職向けに提供する・部下の過重労働管理の基本対応情報を管理職向けに発信する・復職者を受け入れる予定の管理職に対し、復職プログラムについて説明する ここまでは、ラインケアについて解説してきました。 管理職が現場で実際に使えるラインケアのスキルが提供できるよう、情報や教育の内容は常に吟味していきましょう。 では、ラインケアに続いて事業場内の産業保健スタッフ等によるケアについて解説します! エリクシアでもラインケア研修を実施中です!ストレスの見える化から始まる「eラインケア研修」(管理職向けメンタルヘルス研修)部下のココロの動きを読み、メンタル不調者の発生予防/対処法が身に付く「ラインケア研修」 事業内の産業保健スタッフ等によるケア 事業場内の産業保健スタッフ等によるケアとは、衛生管理者や産業医などが、専門的、客観的な立場から、労働者の保健指導や健康相談を行うことです。 事業場内の産業保健スタッフ等とは、下記の通りです。 <事業場内産業保健スタッフ一覧>○産業医労働者の健康管理を担う専門的立場から対策の実施状況の把握、助言・指導などを行う。また、ストレスチェック制度及び長時間労働者に対する面接指導の実施やメンタルヘルスに関する個人の健康情報の保護についても、中心的役割を果たす。○衛生管理者等教育研修の企画・実施、相談体制づくりなどを行う。○産業保健師労働者及び管理監督者からの相談対応などを行う。○心の健康づくり専門スタッフ教育研修の企画・実施、相談対応などを行う。○人事労務管理スタッフ労働時間等の労働条件の改善、労働者の適正な配置に配慮する。○メンタルヘルス推進担当者産業医等の助言、指導等を得ながら事業場のメンタルヘルスケアの推進の実務を担当する。衛生管理者等や常勤の保健師等から選任することが望ましい。労働者のメンタルヘルスに関する個人情報を取り扱うことから、人事権を有するものは選任しない。 厚生労働省は、「メンタルヘルス指針」において、事業場内産業保健スタッフによるケア推進のためには以下のような内容の教育研修、情報提供を行う必要があると定めています。 ●事業場内産業保健スタッフに対する教育研修・情報提供の具体的内容①メンタルヘルスケアに関する事業場の方針②職場でメンタルヘルスケアを行う意義③ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識④事業場内産業保健スタッフ等の役割及び心の健康問題に対する正しい態度⑤職場環境等の評価及び改善の方法⑥労働者からの相談対応(話の聴き方、情報提供及び助言の方法等)⑦職場復帰及び職場適応の支援、指導の方法⑧事業場外資源との連携(ネットワークの形成)の方法⑨教育研修の方法⑩事業場外資源の紹介及び利用勧奨の方法⑪事業場の心の健康づくり計画及び体制づくりの方法⑫セルフケアの方法⑬ラインによるケアの方法⑭事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報⑮健康情報を含む労働者の個人情報の保護等 事業場内産業保健スタッフは、心の健康づくり計画の実施にあたり、中心的な役割を担っていきます。 具体的には、セルフケア・ラインケアが効果的に実施されるための支援、就業上配慮が必要な状態の労働者がいた場合の会社への助言などです。 また、事業場外資源とのネットワークを形成したり、その窓口になったりと、幅広く活動します。労働者が自分一人では対応できない時、また、管理職だけでは判断がつかない場合など、積極的に活用してもらえるよう、存在が社内に周知されていることが大切です。 なお、小規模事業場で必要な事業場内産業保健スタッフが確保できない場合は、衛生推進者または安全衛生推進者を社内のメンタルヘルス推進担当者として選任することもあることを、覚えておきましょう。 以下、事業場内産業保健スタッフによるケアを推進するための具体的取り組み事例です。 <事業場内産業保健スタッフに対する取り組み事例>・メンタルヘルス評価指標を設定し、現状評価から新たな対策を立案する・研修実施後、期待した効果が得られているか、受講者にアンケートを実施する・衛生委員会への参加者を定期的に変え、社員の意見を多く取り込めるようにする・ストレスチェックの見方・活用方法に関する研修を産業保健スタッフ対象で実施する・メンタルヘルス不調者発生時のフローチャートを作成する・復職プログラムを見直し、再休職を予防する体制を整える・社内報にて産業医・保健師・カウンセラー等の紹介をする ここまでは、事業場内産業保健スタッフによるケアについて解説してきました。 事業場内にいる産業保健スタッフは、ラインケア、セルフケアがうまく機能するためにも、中心的な役割を担っています。専門的な知識を有し、様々な相談に迅速に対応できる存在であることが大切です。 では、事業場内産業保健スタッフのケアに続いて、事業場外資源によるケアについて解説します! 事業場外資源によるケア 事業場外資源によるケアとは、企業が抱える問題や労働者が求めるサービスに応じて、メンタルヘルスケアに関し専門的な知識を有する外部機関の支援を活用することです。 労働者は、相談内容がデリケートな場合、安心して話せないという理由で社内窓口での相談を望まない事も多く、このような場合も事業場外資源が役に立ちます。 事業場外資源の具体例は下記の通りです。 <事業場外資源一覧>・都道府県産業保健総合支援センター・健康保険組合・労災病院・中央労働災害防止協会・労働者健康保持増進サービス機関・精神科、心療内科等の医療機関・地域保健機関(精神保健福祉センター/保健所/地域産業保健センター)・外部専門家(労働衛生コンサルタント/公認心理師/臨床心理士/精神保健福祉士/産業カウンセラー) 事業場外資源を探す際は、その機関でメンタルヘルスケアに関するサービスが適切に受けられるか、個人情報などの情報管理体制が整備されているかどうかなど、事前に確認しましょう。なお、事業場外資源を活用する上では、依存しすぎて事業場内産業保健スタッフが主体性を失うことがないよう注意する必要もあります。役割分担としては事業場内産業保健スタッフ等が中心となり、必要に応じて事業場外資源から情報提供や助言を受けられる体制にしておくことが望ましいです。 ただし、明らかに医療の力が必要な場合や、高度な専門的知識が必要だと判断した場合は、速やかに事業場外の医療機関や地域保健機関に繋げられるよう、日頃からネットワークを作っておきましょう。 ちなみに、従業員50人未満の事業場に対しては、十分な産業保健サービスを提供できないなど一定の条件を満たすと、地域産業保健センターが無料でサービスを提供してくれます。 以下、事業場外資源によるケアを推進するための具体的取り組み事例です。 <事業場外利用資源による取り組み事例>・利用できる事業場外資源の一覧表を作成して社内に周知する・年2回保健師に訪問してもらい、労働者の健康管理について助言を受ける・希望制で外部専門家によるオンラインカウンセリングを利用できる体制を作る・メンタル不調者や休職者が発生した際、主治医から必要に応じて助言をもらう・不調者対応について産業保健総合支援センターに相談する ここまでは、事業場外資源によるケアついて解説してきました。 事業場外資源は、高度な専門的知識を有しており、いざという時に頼れる、助言を求めることができる機関であることが大切です。また、扱う情報は機微なものが多くなるため、信頼できる機関であるかどうかも重要なポイントです。 これらのポイントを踏まえ、ネットワークを作っていきましょう。 職場のメンタルヘルス対策の全体像が知りたい方はこちらの記事もご参照ください!これだけは知っておきたい!職場のメンタルヘルス対策はじめの一歩 まとめ 今回の記事では、4つのケアの中身を具体的に見てきました。4つのケアそれぞれの役割は理解できたでしょうか。事例を参考に、自社に足りていないケアや、今後重点的に行う必要があるケアを洗い出していきましょう。 次回の記事では、「4つのケアを進める前に見ておきたい注意点と進める手順」です。4つのケアを進める上での注意点や、理想的な手順について解説しますので、今回の記事と合わせてお読みください。 [シリーズ]徹底解説!職場のメンタルヘルス対策4つのケア~具体例も手順もわかる~1:大前提!職場のメンタルヘルス対策4つのケアの役割と具体例 ←今回はこちら2:成否の分かれ道?!メンタルヘルス4つのケアの理想的手順とは3:見えていますか?!4つのケアの繋がりと全体 メンタルヘルス対応に関する課題はエリクシアで解決! メンタル不調はなぜ起こるのか?当社産業医サービスでは面談を通じて不調の原因を分析し見える化するだけでなく、ストレスチェックとの組み合わせにより、不調が起こる要因を分析し、予防に向けた取り組みを、医療だけでなく、心理や人事コンサルティング的側面で提案します。>詳しくはこちら