企業はどこまでやるべき?防災対策見直しのススメ 2022/03/11 2023/09/26 衛生管理者/衛生委員会 企業で行っている防災対策を見直しましょう 防災対策は万全でしょうか?日本は古くから災害が多い国です。近年では、東日本大震災や西日本豪雨など、自然災害が増加しており、災害時の企業リスクも高まっています。 災害時の企業リスクというと、経済的損失を思い浮かべるかもしれません。自社の利益を守るための対策はもちろん重要ですが、災害時に企業が従業員を守ることは安全配慮義務に含まれており、災害のリスク対策に欠かせません。 ただ、「防災対策」と一言で言っても幅広いため、企業では何を優先して、どこまでやるべきか迷うことも多いのではないでしょうか。今回は企業が実施するべき職場の防災対策について、最低限実施すべき5つのポイントからリモートワーク環境を踏まえた対策までご紹介します。 この記事でわかること(目次)企業で行っている防災対策を見直しましょう企業が万が一に備える5つのポイント①オフィス家具を固定して物理的な危険を回避!②情報・データシステムを保護して情報資産の紛失を防止!③避難経路を点検することで、スムーズに安全確保!④マニュアルを整備して、災害時にとるべき行動を明確に!⑤防災教育・防災訓練を実施して、災害時に強い会社に!社員に自宅の防災対策を周知しましょう自宅の防災対策で従業員に伝えるべき3項目防災対策で必要なグッズは?会社で準備すると良い防災グッズは?会社で被災することを想定して社員が準備すると良いものは?災害発生!防災担当者がリモートワークだったらどうする?従業員の防災教育が大切リモートを想定した災害対策本部へまとめ衛生管理体制の均質化に関する課題はエリクシアで解決!すべて表示 企業が万が一に備える5つのポイント 企業には労働契約法第5条により、「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」という安全配慮義務があります。これは災害時にも労働者を守る責任があるとされる場合が多く、企業は日ごろから防災対策を行う必要があります。 また、企業の防災対策は災害による人的被害を最小化するためだけでなく、災害時の事業活動の維持・早期回復を目指す「事業継続」の観点からも重要です。災害時もスムーズに事業継続できることは、社会貢献にもつながります。従業員を守る「防災」と「事業継続」の2つの視点を持って、職場で備えるポイントを確認していきましょう。 ①オフィス家具を固定して物理的な危険を回避! 近年発生している地震では、負傷原因のうち家具類の転倒・転落による負傷が3割~5割を占めています。まずは身の回りの安全を確保するために、家具や備品の固定、耐震対策を行うことが重要です。 オフィスを見渡して倒れてきたら危ない物や落ちてきそうなものがないか、チェックしてみましょう。そのうえで、棚の転倒防止のために突っ張り棒や安定板など、必要な耐震グッズを検討します。 〈身の回りで気づきにくい危険な場所確認ポイント〉・ガラス窓のそばに大きな家具を置いていないか ※地震発生時に倒れた家具によって窓ガラスが割れてけがをする危険があります。・コピー機やキャビネットは固定されているか・普段作業している周りに倒れてくるような家具や落下しそうなものがないか ②情報・データシステムを保護して情報資産の紛失を防止! 重要情報のバックアップを取っておらず重要データの全てを失うことは、災害時には珍しい話ではありません。事業継続において欠かせない大切なデータをなくさないように、遠隔地へのデータ保管もしくはクラウド上に保管するとよいでしょう。パソコンなどの情報端末の落下や転倒を防止することも、情報を保護する方法の一つです。また、書類を整理整頓しておくことも大切です。地震によって大量の書類が散らかってしまい、大事な書類がどこにあるか分からないという事態を防ぐことができます。 ③避難経路を点検することで、スムーズに安全確保! まずは行政が発行している会社周辺のハザードマップを確認しましょう。自社の立地から、どんな災害リスクがあるのかを把握しておくことが大切です。ハザードマップで災害時のリスクを確認したら、次にオフィス内の避難経路を確認しましょう。通路や出口、階段をふさぐようなものを置いていると、スムーズに避難できない恐れがあります。衛生管理者や防火担当者などの担当者を決めて定期的に点検を行いましょう。 ④マニュアルを整備して、災害時にとるべき行動を明確に! BCPを策定しましょう BCPをご存じでしょうか?「Business Continuity Plan」の頭文字を取った言葉で、「事業継続計画」と呼ばれています。自然災害を含む企業の緊急事態において、企業が存続するための対策を記したものです。BCPを策定している企業は18.4%(2023年6月時点※)と低水準ですが、政府が示す「一斉帰宅抑制の基本方針」にも必要な取り組みであると記載されています。 大きく2つのメリットからBCP策定をお勧めします。 一つ目は、早期復旧に向けて速やかに対応できる点です。BCPを策定していれば、緊急事態発生時に行うべき重要な業務や物事の優先度を可視化できます。 二つ目は企業評価の向上につながるという点です。災害後に事業が停止してしまうと、取引先に迷惑をかけてしまいます。事業を継続・早期再開できれば、取引先だけでなく投資家からの評価も得られるでしょう。 ※参考:帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」(2023年) 帰宅困難者対策を忘れずに 東京都帰宅困難者対策条例では、従業員の一斉帰宅の抑制が事業者の努力義務となっています。 鉄道などの公共交通機関の復旧の見通しがない中、多くの人が帰宅を開始すれば、火災や建物倒壊、余震などの二次被害に遭う可能性があり、大変危険です。それだけでなく、駅周辺や道路が混雑することで、災害時に優先して実施しなければならない救助・救援活動などに支障が生じる可能性もあります。 災害発生時にむやみに移動せず、安全な場所に留まるよう従業員に周知する方法を決定しておきましょう。具体的な帰宅困難者対策については、東京都の帰宅困難者対策ハンドブックをチェックしてみてください。 東京都防災ホームページ:帰宅困難者対策ハンドブック 内閣府防災情報のページ ⑤防災教育・防災訓練を実施して、災害時に強い会社に! せっかくマニュアルを整備しても、災害時にきちんと機能しないと意味がありません。策定したマニュアルをもとに、定期的に教育と訓練を行うようにしましょう。 基本的な防災訓練としては以下の2つが挙げられます。 (1)BCPなどのマニュアルをもとに、災害時を想定して担当者と従業員が実際に動いてみる(2)安否確認がきちんと行えるか従業員に確認 ただ、シナリオに沿って行うだけでは、従業員が興味を持って参加してくれないかもしれません。従業員一人一人が当事者意識を持ち、興味を持って参加できるように内容を工夫するとよいでしょう。例えば、消防署が行う防災訓練などのように、外部の防災訓練を取り入れてみるのも一案です。応急手当の講習や、初期消火訓練、炊き出し訓練など、実践に役立つものが多く、楽しみながら参加できることも魅力的です。 社員に自宅の防災対策を周知しましょう 被災時の事業上の被害内容として「役員・従業員の出勤不可」と回答する企業が最も多かったとされており、従業員の自宅での安全を確保することも企業の事業継続に欠かせないと言えます。大規模な災害に備え、オフィスで働く従業員だけでなく、在宅勤務で働く従業員の安全にも対策を行いましょう。 自宅の防災対策で従業員に伝えるべき3項目 ①自宅環境を整えましょう 会社と同様に、従業員も自宅周辺のハザードマップの確認をして、自宅周辺の災害リスクを把握してもらいましょう。また、家具の転倒防止対策を行い、自宅の安全性を高める必要があります。そのためには、従業員への啓発が課題となるでしょう。従業員の行動を促すために、家具転倒防止グッズの購入費を補助するなどの方法があります。 ②備蓄品を備えましょう 大規模地震などでは、当面の間ライフラインが使えない・物資の入手が困難といった恐れがあります。自宅の倒壊を免れた場合、当面自宅に留まって生活することが想定されます。災害時に自宅で生活するうえで必要な食料や生活必需品を日ごろから備えておくことが重要です。 1週間分程の飲料水と食糧、トイレ用品・カセットコンロなどの生活用品を備蓄するよう周知しましょう。疾患がある従業員には、手持ちの処方薬を切らさないように1週間程度のゆとりをもって、定期的に受診をするように周知することも大切です。 ③連絡ツールは複数用意しましょう 最近は、安否確認システムや社内用チャットアプリなどの様々な連絡ツールがあり、安否確認のための手段が充実しています。災害時に通信状況が悪化することを想定して、従業員との連絡ツールは複数用意しておきましょう。連絡ツールを準備したら、非常時にきちんと機能させる必要があります。防災訓練や日々の業務を通じて、従業員が連絡ツールを使えるようにしておきましょう。 防災対策で必要なグッズは? 2011年3月11日に発生した東日本大震災によって、首都圏では帰宅困難者が大量に発生しました。これをきっかけに東京都では、首都直下型地震などの大規模災害に備えて、東京都帰宅困難者対策条例が策定されています。この中の条例17号などで、企業には同じ事業所で働く全従業員を対象に3日分の食糧などの防災備蓄が求められています。企業で準備しておくべき防災グッズを確認していきましょう。 会社で準備すると良い防災グッズは? 東京都帰宅困難者条例では、企業は3日分の食糧を備蓄するように努めるという努力義務が課されています。電気、ガス、水道、下水などのライフラインの普及や、人命救助が落ち着くまでに3日ほどかかると言われています。大規模な災害時には、避難生活が長期化する可能性もあるため、最低限3日分は必要と考え、可能であれば1週間分備蓄することが望ましいでしょう。 会社で被災することを想定して社員が準備すると良いものは? 会社が非常時に備えて備蓄を行うことが努力義務ではありますが、コストの問題などで従業員全員分の備えが難しいという場合もあるかもしれません。会社だけで賄いきれない部分は、従業員に必要なものを個人で準備しておくよう周知することも一案です。 災害発生!防災担当者がリモートワークだったらどうする? 新型コロナウイルスの蔓延により、リモートワークなどの新しい働き方が普及してきました。自然災害はいつ起きるか予測できないため、緊急時に防災担当者が在宅勤務で社内にいないケースも十分考えられます。そのような場合を想定して、会社が事前に行っておくべきことをご紹介します。 従業員の防災教育が大切 防災担当者不在時への対策を行っていないと、非常時に誰が全体への指示を出すか定まっておらず、従業員が混乱する恐れがあります。防災担当者不在時の代わりの担当者を決めておき、代わりの担当者もしっかり対応できるように教育しておきましょう。なお、担当者と代わりの担当者、できる限りどちらの担当者も不在とならないように勤務を組むことも対策の一つです。 また、万が一防災担当者がいなくて混乱しないように、従業員には防災グッズや備蓄品の場所、負傷者の救護方法を最低限把握しておいてもらうよう防災教育を行うことも大切です。 ※安全衛生教育については、過去の記事に記載しています。 雇入れ時と作業内容変更時の安全衛生教育を実施して労働災害を防止しましょう! リモートを想定した災害対策本部へ 防災担当者が在宅勤務で社内にいなくても、通信状況が良ければ、ビデオ会議システムを使用して災害対策本部を運営することができます。さらに、防災担当者が実際に会社に行かずとも、社内の被害状況を確認することも可能です。ビデオ会議システムを使用して防災訓練を実施するなど、リモートで災害対策本部を運営できるように、日頃から練習しておきましょう。 まとめ 本記事では、企業の防災についてご紹介しました。災害が実際に起きてから後悔しないように、日ごろからの対策が大切です。会社によっては、防災対策を考えるゆとりがないということもあるかもしれません。一度に全て準備するのではなく、事業継続や従業員の安全を念頭におきつつ、できることから準備を進めていきましょう。 エリクシア産業医では、今回ご紹介した防災対策を含め安全衛生についてのご相談や衛生管理体制の構築についてのご相談を受け付けています。ぜひお気軽にご相談ください。 衛生管理体制の均質化に関する課題はエリクシアで解決! 全国及び海外に拠点を持つ会社において実現の難しい課題である「衛生管理体制の均質化」。 当社はノウハウや統括産業医を活用し、従業員ケアのコントローラーとして「均質化」支援を行っています。>詳しくはこちらへ
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