遅刻、欠勤、何度注意しても直らない従業員、さてどうする?対応の基本と注意点

勤怠不良の人に会社としてどう対応していくのが正解?

「遅刻を何度注意しても直らない」
「突発的な欠勤が、数カ月に1回発生している」
「定期的に早退が発生している」

遅刻や欠勤、早退が続いている従業員に関して、現場管理職から「何度注意しても直らない、どうしたらいいのか」という相談が人事のもとへ上がってきた場合、人事担当者はどう対応したらよいでしょう。

改善がなされないまま放置した場合、他のメンバーへの負担増加はもちろん、士気の低下や風紀の乱れにつながります。また、現場で「度を越えた叱責をする」、「妥当性に欠ける懲戒処分」など、誤った対応をしてしまうと、会社は悪くなかったのに立場が逆転し、ハラスメントなど責任を追及されてしまう可能性もあります。

本記事ではそのような事態を防ぐために、勤怠不良がある従業員に対するNG対応と、基本的な対応の流れ、産業医・弁護士への相談のタイミングについて説明します。

勤退不良の従業員に関する課題はエリクシアで解決!
この記事でわかること(目次)
  • 勤怠不良の人に会社としてどう対応していくのが正解?
  • こんな対応に注意!勤怠不良者対応NG集
  • 産業医が勧める、勤怠不良者に対する基本対応プロセス
  • 会社での対応に困ったら誰に相談するか?
  • まとめ
  • 勤退不良の従業員に関する課題はエリクシアで解決!
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    こんな対応に注意!勤怠不良者対応NG集

    まずは、勤怠不良者に行ってはいけないNG対応に関して説明します。

    NG対応その1:全く注意指導を行わず、懲戒処分や解雇をする

    勤怠不良があるからといって、注意などを何もせずに突然の懲戒処分を行うことは会社側にリスクのある行為です。懲戒処分を行う場合は労働契約法15条に定められている「懲戒権濫用法理」が適用となります。詳細は社労士・弁護士の専門となるため本記事で詳細は省きますが、数回の遅刻や欠勤程度に対し、当該社員に自覚と反省を促す口頭や書面による注意・指導や警告を実施せず懲戒処分を下すと、会社側が“懲戒権を濫用した”とみなされてしまう可能性があるということです。

    同様に、解雇を検討している場合も要注意です。解雇は最終手段です。再三の注意や指導など様々な手をつくした証跡や、解雇事由が合理的といえるか等、社会通念上相当であると認められない場合、解雇無効になってしまう可能性があります。従って、勤怠不良があった際には、会社側は以下を心がけることが大切です。

    ◆勤怠不良があった際に会社が心がけること その1
    ・懲戒処分や解雇など雇用に関する具体的な行動をすぐに起こさない
    ・まずは注意や指導を重ね、その証跡を残す
    ・対応する前に社労士・弁護士に相談する

    NG対応その2:原因や事情を確認しない

    勤怠不良が続いている従業員=職務怠慢、という考えになっていませんか?

    勤怠不良となっている背景には何かしらの事情があるかもしれません。まずは本人へ事情を確認しましょう。業務環境が要因となっている場合もあれば、子育てや介護などプライベートが要因となっている可能性もあります。

    もしメンタル不調だった場合は、業務効率の低下や勤怠不良などの異常を経てから、より深刻な事態に発展する可能性もあります。本来であれば欠勤や遅刻は社会人としてあってはならない行為ですが、まずは原因や事情をヒアリングしましょう。

    ◆勤怠不良があった際に会社が心がけること その2
    ・勤怠不良に対する怒りを一旦鎮める
    ・勤怠不良の原因・事情を、人事または管理職より本人へ直接ヒアリング
    ・場合によっては、産業医面談を活用しメンタル不調の可能性を確認

    NG対応その3:対応を行わない

    「対応を行わないなんてありえない」と思われる方もいるかもしれません。しかし実際には、起こりえます。

    例えば、遅刻や欠勤、早退をしていることを何度か注意するも身体的な事情を言われてしまった場合や、所定労働時間の8割は出勤しているという微妙なラインの場合はどうでしょうか。「8割は出ているし、業務にもそんなに影響はないし・・・」となし崩し的に欠勤や遅刻を許可してしまうといった対応になりかねません。また、注意をしても悪びれる様子もない場合、どのように扱ったらよいか悩んでしまうかもしれません。

    だからといって、対応を行わないままでは、他のメンバーへ悪影響が及ぶなど会社として損失が生じます。万が一、当該従業員がメンタル不調だった場合、勤怠不良という明らかな異常があるにも関わらず、会社が的確な対応を行わなければ「安全配慮義務」違反を問われる可能性もあります。

    ◆勤怠不良があった際に会社が心がけること その3
    ・その1の心がけに従って、対応は必ず行う
    ・勤怠不良という「異常」を、安全配慮の観点で捉える
    ・就業規則、社内ルールがあることを念頭に考える

    以上が、勤怠不良者へのNG対応3つでした。原因を確認せず、また注意や指導なども行わずに突然処分を下した場合、後々のトラブルになるため大変危険です。「何度注意しても直らない」と扱いづらい状況になっていたとしても、会社にある就業規則やその他社内ルールは守らせなければなりません。また安全配慮義務の観点からも毅然とした態度で冷静に向き合うことが重要です。

    産業医が勧める、勤怠不良者に対する基本対応プロセス

    NG対応を踏まえた上で、産業医が勧める勤怠不良者に対する基本対応を3つのプロセスでお伝えします。

    プロセス1 まずは就業規則に休職命令があるかチェック

    就業規則には、例えば「業務外の傷病により欠勤が1ヶ月に達し引き続き療養を要するときに休職を命ずる」など休職に関する規程の記載(休職命令)がある場合があります。まずは、会社の就業規則に記載があるかを確認しましょう。

    休職命令」とは安全配慮義務等に基づき、会社が従業員に対して、安全かつ健康に働いてもらうために、労務管理上の対応です。多くの場合、就業規則上、休職は社員からの申請または会社からの休職命令によって始まります。欠勤が続いていることを理由に会社側から休職命令を出す場合には、その根拠や客観的にそれが妥当と判断できる証跡(勤怠状況・上司の報告書等)を残しておくこが必要です。

    プロセス2 面談で心身に不調がないか?を確認

    次に、当該従業員の体調を面談などで確認しましょう。まずは上司や人事から本人へ事情を確認していただき、もし、何かしらの心身に不調がありそうであれば、心身の状態把握を目的に産業医面談で体調確認をすることも一つの方法です。メンタル面での不調の場合、ストレスによるメンタル不調から、発達障害や治療が必要な精神疾患まであります。それぞれの原因によって対応方法のポイントに違いがあるため、可能であれば産業医面談をすることをお勧めします。

    心身の不調により労務提供が明らかにできていない場合は、就業規則に従って休職命令を行う場合もあります。また産業医の面談で医療機関の受診が必要と判断された場合は、受診勧奨を行う場合もあります。

    プロセス3 「注意・指導」を段階的に行う

    面談を通じて、心身の不調が深刻でない限りは、指導や注意を行います。 注意・指導にもレベルがありますので、基本的にはすぐに処分せず1~4の順と考えましょう。

    1) 口頭注意 ※注意した日付と内容を書面に残しておく
    2) 書面による注意 ※複数回行う。警告書など
    3) 軽い懲戒処分(戒告やけん責など)
    4) 重い懲戒処分

    ここで重要なことは、「何度も注意・指導をした」、というエビデンスを残すことです。処分の妥当性として、業務への影響の度合いや1回あたりの時間数、事情、懲戒処分を行うまでに注意や警告を積み重ねたか、などから総合的に判断されますので、会社としては、事情を確認しながら改善をするよう指導・注意を複数回行ったという履歴を残しましょう

    また不必要に長時間叱責する、他のメンバーの前で大声で指導する、職務怠慢を理由にお仕置きを与える等の行為は、パワーハラスメントになるケースもありますので注意が必要です。

    ※対応に悩んだ際は、会社が想定している対応シナリオにリスクがないか予め弁護士へ相談しましょう。

    会社での対応に困ったら誰に相談するか?

    勤怠不良者がいる場合、いきなり弁護士に相談しづらいケースもあるかもしれません。そんな時は、まずは産業医へ相談いただくとよいかもしれません。その上で、ただの職務怠慢なのか、何かしらの心身の不調を抱えているのか、職場環境の問題なのか、アルコール依存症等他の疾患によるものか、家庭の事情なのかなど、あらゆる可能性を考えながら従業員への対応を検討していくことが大切です。

    産業医に相談するメリットは?

    大きく3つあります。

    ①心身の不調も含め、状態把握ができる
    産業医は医学的な知識を有しているため、心身の不調も含めて状態把握をすることが可能です。人事担当者や管理職にとっては、医学的な知識がなく面談対応することにハードルを感じることがあるかもしれません。そんなときは、初期の段階から産業医へ相談することのメリットは大きいでしょう。

    ②会社対応の選択肢が得られる
    産業医は、ストレスによるメンタル不調なのか、精神疾患など脳に器質的な異常がある可能性があるか、体の不調があるかなどを考えながら、面談を行います。面談後は、会社対応に関する意見を伝えます。会社としては産業医の意見を踏まえながら対応を検討することができます。医学的観点から就労する上で、何に注意し、会社としてどのような措置をとった方がよいのか、提言することができます。

    ③受診勧奨の目安が相談できる
    体調不良がある従業員の場合、会社で受診勧奨のレベルを判断するのは難しいかもしれません。そんな時は産業医に相談することで、産業医が受診したほうがよいと判断した場合は、産業医から受診を促すことも可能です。また、産業医へ相談した時点では受診するほどではなくとも、今後の受診勧奨をするべき症状や目安を確認しておくことで、会社対応の流れをとらえることができます。

    ※産業医が対応できる相談ジャンルについてはこちらの記事でも解説しています。
    健康相談・メンタルヘルスだけじゃない!産業医が対応できる5つの相談ジャンル

    弁護士への相談はどの段階で行う?

    体調不良がないのに勤怠不良が続いている場合は、早めの段階で想定している会社対応について弁護士にアドバイスをもらうことをおすすめします。具体的な会社対応を行う前に相談しておくことで、誤った対応を避けることができ、後々のトラブル防止へつながります。

    まとめ

    勤怠不良の従業員がいた場合は、突然の懲戒処分や放置をすることは会社対応としてNGであることを覚えておきましょう。職務怠慢は目につく行為ですが、具体的な会社対応を検討する前に、自社の就業規則やルールを確認し、冷静に対応を検討することが重要です。対応に困った際には、産業医や弁護士など、外部関係者と連携しながら検討をしていきましょう。

    勤退不良の従業員に関する課題はエリクシアで解決!

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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