形骸化しない衛生委員会の基本と運用のポイント

衛生委員会の基本知識と、開催の目的とは

会社は、従業員の安全や健康に配慮するよう努めなければなりません。

労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場では衛生委員会を設置するよう定められています。毎月1回以上衛生委員会を開催し、労働者の危険や健康障害を防止する対策について調査審議しなければならないと規定しています。

しかし、衛生委員会を運用するうえでこんな悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
「衛生委員会が盛り上がらない」
「どんなテーマについて話し合えばいいかわからない」
「衛生委員会が形骸化している」

そこで、この記事では、衛生委員会で調査審議すべきことや、衛生委員会を形骸化させない秘訣についてご紹介します。

衛生管理体制の均質化に関する課題はエリクシアで解決!

この記事でわかること(目次)
  • 衛生委員会の基本知識と、開催の目的とは
  • 衛生委員会の目的と構成
  • 安全衛生委員会とは?どう違う?
  • 衛生委員会でも安全衛生委員会でも共通の事項
  • まとめ
  • 衛生管理体制の均質化に関する課題はエリクシアで解決!
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    衛生委員会の目的と構成

    衛生委員会の目的

    従業員が心身ともに健康に活き活きと仕事ができる環境を整えるため、経営層や人事総務と現場の従業員が意見を述べ合い、現状に対する認識を共有し、取り組むべき課題の具体的解決方法を設定することが目的です。

    衛生委員会は月1回開催

    労働安全衛生法で、常時50人以上の労働者を使用する事業場において、業種を問わず衛生委員会を設置することが義務付けられています。(労働安全衛生法第18条)毎月1回以上開催し、議事録は3年間保存する必要があります。法律上は、衛生委員会は常時50人以上の労働者を使用する事業場で必要とされていますが、50人未満の事業場であっても、安全衛生に対する意識づけのために自主的に開催しても構いません。

    衛生委員会のメンバーは事業者が指名

    衛生委員会を構成するメンバーは以下の要件に従って、事業者が指名します。

    ①総括安全衛生管理者または事業の実施を統括管理する者等(議長):1名
    ②衛生管理者:1名以上
    ③産業医:1名以上
    ④労働者(衛生に関する経験を有する者):1名以上

    議長には、事業の統括管理者で、例えば人事総務部の部長やそれに準じた責任者がなるケースが多いです。 議長以外のメンバーの半数については、過半数労働組合(過半数で組織する労働組合が無い場合は労働者の過半数を代表する従業員)の推薦に基づいて指名する必要があります。②の衛生管理者は国家資格となっています。④の衛生に関する経験は、必ずしも衛生管理業務に特化した実務経験を要するわけではなく、オフィスの掃除やデスク周りの整理整頓、備品の管理といった業務を担当する人でも該当します。
    衛生管理者資格、1種と2種の違いと取得に関するコラムはこちら

    衛生委員会で話し合う、調査審議事項

    衛生委員会では、次の事項について労使一体となって話し合わなければなりません。

    労働安全衛生法 第18条第1項
    ①労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
    ②労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
    ③労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
    ④前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

    ④の労働者の健康障害の防止及び保持増進に関する重要事項には次の項目が含まれます。

    労働安全衛生規則 第22条
    ・衛生に関する規程の作成に関すること
    ・衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
    ・衛生教育の実施計画の作成に関すること
    ・定期健康診断等の結果に対する対策の樹立に関すること
    ・長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること
    ・労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること

    具体的には、労働災害の再発防止策や長時間労働の有無とその対応、健康診断の実施状況や結果報告、メンタルヘルス研修の実施予定などが話し合われます。

    安全衛生委員会とは?どう違う?

    安全衛生委員会とは安全委員会と衛生委員会を統合した委員会のことです。安全委員会と衛生委員会は、どちらも労働災害防止のために設置される点は同じですが、設置基準や委員会の構成メンバー、調査審議事項が異なります。 どのような違いがあるのか見ていきましょう。

    安全衛生委員会は業種に応じた設置基準がある

    林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種、運送業の一部の業種、自動車整備業、機械修理業、清掃業など一定の業種については「安全委員会」を設置しなければなりません。 安全員会と衛生委員会の両方を設置しなければならない場合は、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することが可能です。(労働安全衛生法第19条)

      業種 常時使用する労働者の数 安全委員会 衛生委員会
    1 林業、鉱業、建設業、製造業の一部(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業 50人以上 必要 必要
    2 製造業(1以外)運送業(1以外)電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、 燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業 100人以上 必要 必要
    50人以上100人未満 義務なし 必要
    3 1と2以外の業種 50人以上 義務なし 必要

    厚生労働省ウェブページより引用作成

    安全衛生委員会構成メンバー

    安全委員会を構成するメンバーは3つで衛生委員会と少し異なります。

    ①総括安全衛生管理者または事業の実施を統括管理する者等(議長):1名
    ②安全管理者:1名以上
    ③労働者(安全に関する経験を有する者):1名以上

    ②③は、衛生委員会同様に、半数の委員については過半数労働組合(過半数で組織する労働組合が無い場合は労働者の過半数を代表する従業員)の推薦に基づいて指名する必要があります。

    安全衛生委員会で話し合う、調査審議事項

    安全委員会では、以下の内容を話し合うように定められています。

    1.安全に関する規程の作成に関すること。
    2.危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、安全に係るものに関すること。
    3.安全に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。
    4.安全教育の実施計画の作成に関すること。   など

    衛生委員会でも安全委員会でも共通の事項

    衛生委員会、安全衛生委員会は設置基準や、委員の構成、調査審議事項に異なる点がありますが、どちらの委員会でも共通していることが、以下3つとなります。

    1 毎月一回以上開催するようにしなければならない
    2 開催の都度、委員会における議事の概要を労働者に周知することが必要
    3 開催の都度、委員会の意見及び講じた措置の内容並びに委員会における議事で重要なものに係る事項を記録し、これを3年間保存しなければならない

    衛生委員会でも安全衛生委員会でも共通の事項

    衛生委員会は毎月開催するため、回を重ねるごとにテーマが尽きてしまい、内容がマンネリ化することも少なくありません。形骸化してしまう理由としては、話合うテーマが毎年同じことや発言する人が少ないこと、情報共有にとどまっていることなどが考えられます。 これでは衛生委員会の本来の目的や機能が果たせなくなる恐れがあるため、活発な議論を促す工夫が必要です。そこで、衛生委員会を盛り上げるための秘訣を3つご紹介します。

    秘訣1 基本議題を決めてスムーズな開催を実現

    まず、衛生委員会で必ず話し合うべき基本的な議題についてご説明します。

    基本議題=話し合うべき決まりの項目

    話し合うべき基本的なものとして、人事・総務の報告事項があります。具体的な内容は以下の通りです。

    ・労働災害の発生事例の報告と対策について
    ・長時間労働の状況の報告と対応について
    ・健康診断実施状況や結果の報告
    ・休職者の報告
    ・ストレスチェックの実施計画や、実施状況、組織分析結果の報告

    これらの情報は安全衛生法により、事業者から産業医に情報提供することが定められていることもあり、衛生委員会で定例報告として盛り込むと良いでしょう。特に労働災害については詳細に報告し、産業医の専門的な立場からの意見を仰ぎ、どのように再発を防止していくかを話し合うことが大切です。

    年間テーマ

    衛生委員会は毎月開催しなくてはならないため、何年も行っているとテーマ設定に悩む会社は少なくありません。そこで、衛生委員会の活性化を図るために季節性のあるものやその時々で話題になっているテーマについて調査審議することをおすすめします。

    例えば、5月は健康診断、6月は食中毒、7月は熱中症、8月はメンタルヘルスセルフケア、9月は職場の防災というようにテーマを設定します。毎回テーマ設定で悩まないように、年度初めの衛生委員会で1年分のテーマを設定すると良いでしょう。

    テーマ選びはどうすればいいの?

    テーマを選びに悩んでしまうという方には、3つの方法をおすすめします。

    1つ目は、中央労働災害防止協会が発行する「労働衛生のしおり」や独立行政法人労働者健康安全機構が発行する「産業保健21」などを活用して、産業保健に関連する知識を学ぶ方法です。知識を養うことで、自社の安全衛生に必要なテーマが見つけやすくなります。

    2つ目は、地域の産業保健総合支援センターに問い合わせる方法です。人事や労務、衛生管理者向けの研修を行っているため、テーマになりそうな知識が身につきます。

    3つ目は労働者健康安全機構のウェブページを参照する方法です。月ごとの議事が載っているので、それを参考にテーマを考えると考えるのもよいでしょう。

    いつも同じ人がテーマを考えるのではなく、担当を交代するなどして新しい視点や意見を取り入れることや、委員会のメンバーを1年任期にすることも委員会の活性化につながります。

     

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    秘訣2 職場巡視チェックリスト活用し意見交換を円滑に

    職場巡視は法令で規定されている衛生管理業務の一つです。 従業員が働く作業環境を実際に見て回り、安全衛生上の問題点をチェックし、改善していくことを目的としています。 職場巡視で気になった点については、衛生委員会に共有して、必要に応じて解決していきます。

    実施するのは、衛生管理者と産業医です。巡視を行う際にはチェックリストを作成し、活用しましょう。

    チェックリストのポイント

    職場巡視で確認すべきポイントが4つあります。

    ①作業環境に問題はないか
    (例)照明は暗くないか、整理整頓はされているか、机といすの高さは合っているか など
    ②衛生面に問題はないか
    (例)異臭や悪臭がしないか、水回りは清潔か など
    ③防災面に問題はないか
    (例)避難経路は確保されているか、高さのある棚は耐震対策をされているか など
    ④現場の従業員の意見
    (例)暑い、くさい、まぶしいなど職場巡視をしながら原画の意見をヒアリング

    上記4つのポイントを押さえながら現場の状況を拾い上げましょう。

    秘訣3 アクションプランの作成でPDCAのサイクルを回す

    アクションプランとは、職場巡視や従業員サイドから上がってきた課題に対する改善策のことです。書面の作成義務はありませんが、法令上、職場で課題が上がってきたときには改善策を委員会内で話し合うことが必要とされています。 衛生委員会を活性化したい場合にはPDCAサイクルを回すために、自社で使いやすいフォーマットを作って活用することをおすすめします。

    フォーマット作成時のポイント

    フォーマット作成時のポイントは3つです。

    ①話し合いのプロセスを明示
    どのようにして判断したのかが分かりやすいと、従業員への納得が得られやすいです。
    ②誰が何をするのか行動レベルまで記載
    担当者を決めて、具体的な行動まで明示しましょう。
    ③進捗状況を明示
    現在どのような状況なのかを明らかにすることで、話し合って終わりということを防ぐことができます。

    職場巡視で見つかった課題をアクションプランへ

    巡視時にその場で解決できるものは解決しますが、その場での解決が難しい場合には衛生委員会に持ち込みます。巡視の結果見つかった問題や従業員の声をすべて取り上げるのは大変です。議題に挙げる際には、優先順位を付けると良いでしょう。優先順位の付け方としては、マズローの欲求5段階低次のものを優先して取り組むことをお勧めします。

    最初は、「暑い」「くさい」といった生理的欲求に関わる問題や、「この棚が倒れてきたら危ない」といった安全欲求に関わる問題を優先します。低次の問題が解決されると、高次の欲求に関わる問題に取り組みます。

    最終的に、「この会社で○○を成し遂げたい」といった従業員の声を議題に挙げられえるようになれば、衛生委員会を『従業員満足度向上委員会』という位置づけに発展させることもできます。

    衛生委員会の開催後は議事録周知・保管を

    衛生委員会開催後は、議事録の内容を従業員の見えるところに置き、周知徹底しましょう。 周知方法としては、紙であれば目につく場所に掲示したり、配布したりする方法があります。 議事録のデータを自社のポータルサイトに入れるのも一案です。 そして、衛生委員会後は毎回議事録を作成し3年間保管するようにしましょう。

    まとめ

    衛生委員会は従業員が活き活きと活躍できる環境を整えるために大切な場です。 法律で義務付けられているからと形だけ行うのではなく、基本議題や職場巡視からの気づき、アクションプランを活用して有意義な会となるように努めましょう。年間テーマに悩んだ場合には、産業医に相談し助言を受けることもできます。今回紹介した内容を参考にして、ぜひ今日から工夫できることを取り入れていきましょう。

    ※産業医に相談できる内容について解説した記事はこちら
    健康相談・メンタルヘルスだけじゃない!産業医が対応できる5つの相談ジャンル

     

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

    著作者サムネイル

    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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    https://www.elixia.co.jp/contact/

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